世迷言

総てが並んだ此(こ)の街 揃わない物は無い
唯一つ在(あ)るとすれば 其(そ)れは
幸福と云う名の陽炎ね

一ツ夜(ひとつや)の御伽(おとぎ)の見返りに愛なんて要らない 欲しいのは
昏く光る黄金色(こがねいろ)の時計 そうよ只其(ただそ)れだけで良い
「愛しさ余り君と遠くへ何処迄(どこまで)でも逃げたい」だなんて
甘い科白くれた貴方だから
身包み剥いで疾(と)うに河の底(そこ)逝(ゆ)き

総でが並んだ此の街 揃わない物は無い
唯一つ在るとすれば 其れは
純愛と云う名の飯事(ままごと)ね

甘温(あまぬる)い幻想に浸れるほど最早(もはや)幼くも老いても無く
病み果つ身体と心とだけが今日も憂い世を蝕む
「奇蹟を起すあの樹の下で永遠に結ばれたい」だなんて
お目出度(めでど)うようやっと御望み通りに

総でが並んだ此の街 揃わない物は無い
唯一つ在るとすれば 其れは
永遠と云う名の妄想ね

総でが並んだ此の街 揃わない物は無い
唯一つ求めるもの 其れは
自殺とか云う名の逃走路(にげみち)ね
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