おもいでの宿

湯煙に目隠しされて
手さぐりであなたを探す
別れの宿は天城の麓
忘れさせてとすがってみても
明日はないのね ああ ふたりには

連れ添うて吊り橋渡る
人影に昔が揺れる
三三九度の真似盃に
片目つぶって甘えた頃が
いまは哀しく ああ なつかしい

名残り夜を燃やした朝は
湯上りのタオルも重い
別れの旅は一幕芝居
ふられ上手を演じてみても
からむ未練に ああ 川も泣く
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