夏の記憶

ちっちゃな少年が
夕陽に向って言いました

明日は 何をして遊ぼうかな
また 友だちのところに行こうかな
それとも シロと海に行こうかな

こんなひとりごとを言っていた
少年を見かけたのです
どこかに 幼くあどけない感じが
あったんです
何が私の足をとめさせたのでしょう
ドロンコのシャツ?
傷をつけたホッペに 涙のあとがあって
夕陽をじっと見ていたっけ

末っ子の私には 弟のような気がしたのか
このわんぱくさが
おれのとりえなんだ というような顔で
私のほうをふり向いたっけ
ニコッと笑ったら
ちっちゃな少年もニコッとほほえみ
口笛ふきながら 帰っていった
途中 つまづいてころびそうになった
後姿が 印象的だった

今日 あの場所で
ニコッとほほみ ペコッと
頭を下げていく者があったんです
そうです
あのちっちゃな少年だったのです
今はもう中学生
人より背が低かったのが
今は 私よりずっと高くなって
また 口笛を吹きながら通りすぎて行った
あのぎこちなかった口笛も 今は…
ちょうと 今と同じ夏の夕暮れだったっけ

今日のこのできごとも
あの夏の思い出といっしょに
私だけの心のアルバムに残しておきます
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