彼奴(あいつ)

縄の千切れた のれんを潜り
彼奴と交わす 盃は
筋の通らぬ 世間の闇に
迷い 傷つき 心も枯れた
俺を泣かせる 味がする
一期一会の 出逢い酒

年の頃なら 五十と一、二
彼奴が何故か 気にかかる
日陰暮らしに 染まっちゃいても
腹の底まで 汚れはしない
俺と気性が 似ているのか
揺れる灯りの 影二つ

明方が白々 酔いしれ乍ら
彼奴がぽつり 呟いた
後見ないで 往くしかないさ
生れ横濱 名前は清二
俺の来た道 悔いは無い
明日もさすらう けもの道
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