老人と海

ハダをそめあげたのは 太陽と潮
シワをきざんだのは 時の満ちしお
老人は海から生まれ 海に育ち
海で生きることしか 考えたこともない

若さに酔いしれた 昔日遠し
友も女たちも すでにまぼろし
老人は浜辺にひとり ひとり残る
岸に打ち寄せるのは 変わらぬものがたり

勝利の場面はいまも あざやかなままに
潮にくもった眼も 燃えるほどに
老人は戦ってきた さかなたちと
捕えねじふせ殺し そして愛していた

舟をこぎだせ早く 戦うものよ
くちはてなんものよ いのち愛せよ
老人は海から問われ 海に応え
海へ帰ることしか 考えたこともない
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