沙羅の女

昨夜のことなら 憶えてないが
あの日の別離は 忘れはしない
白いえりあし あのひとだけは
させたくなかった 不幸な女に
椿に宿る 夜露さえ
花と重なる 沙羅の女

おとこの嘘まで 黙って許す
どんな思いで 身を引いたのか
人は誰でも 春待つものを
つめたい仕打ちと 恨んでおくれ
この手の中で まだ香る
花の素顔よ 沙羅の女

濡れてはいないか 俄かの雨に
泣き泣き苦労を してなきゃいいが
いまもこの俺 許せるならば
一生かかって 背負わせて欲しい
これまで泣いた 悲しみを
花と咲け咲け 沙羅の女
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