ふたりの港町

赤い毛布はおりながら 降りた町は
線路沿いにかもめがとぶ 無人駅
ほつれ髪(がみ)にとまる雪を 口で吸えば
なにもいわず身体(からだ)よせた 小さなおまえ
哭(な)くな哭(な)くなかもめ 逝(い)く船もない
ここが故郷(こきょう)と決めた
春になれば風もなごみ はまなすも咲く
ふたりの港町

やぶれ窓が声を喚(あ)げる 浜の番屋
背中まるめおまえはただ 聴いていた
流れ木(こ)っ片(ぱ)拾いあつめ 火をつければ
揺れてともる片手ほどの しあわせあかり

吠(ほ)えろ吠(ほ)えろ海鳴り 失くした夢を
ここで捜すと決めた
春になれば海もないで 岬が光る
ふたりの港町

哭(な)くな哭(な)くなかもめ 逝(い)く船もない
ここが故郷(こきょう)と決めた
春になれば風もなごみ はまなすも咲く
ふたりの港町
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