巴里と画家と女

陽のあふれるアトリエで
絵筆を取る 今日もまた
一日中何もかも忘れて
ただひとり

モンラパン 窓辺に
君が飾った雛芥子が揺れて
美しい街並み
見下ろす夕暮れを僕は愛する

仲間と集うカフェ
喧噪と笑い声に満たされる
なのになぜ思い出すのか
捨てた故郷(まち)を

逃げるように 背を向けた
いまは遠い 異国の地
もうここでしか
描くことができない

目を閉じれば 見えるんだ
罪などない 人たちが
僕の名を呼びつづけているずっと
君のように

モナムール あなたの
夜空色した瞳が好きなの
静かなノワール
暗いカンヴァスに星が灯るわ

本当に描きたい風景は
心の奥に眠る
あなたもきっと
わかっているはずでしょう

悲しみなど そこにない
過ぎたものの 優しさが
光混ぜた絵の具の
色になる

ああわたしは旅をする
見たことない異国の地
少年のあなたが遊んでいる
ほほえんで

哀しみはもう そこにない
過ぎた日々の 懐かしさ
どこにいても
僕を包んでいる

ねえわたしを 連れてって
もし許してくれるなら
そっと芽生えたこの命を抱き
愛しい人の国(ふるさと)へ
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