恋路浜

あなたと流した 涙のような
雨がいつしか 霙(みぞれ)にかわる
秋の終わりの 恋路浜(こいじはま)
忘れられない
肌の匂いの 潮騒が
沁みて哀(かな)しい 能登(のと)の海

女のいのちを 二重(ふたえ)に三重(みえ)に
巻いた小指の 紅糸(べにいと)なのに
いつかちぎれて 流れ雲
遠いあの夜が
揺れてせつない 姫鏡(ひめかがみ)
夢も濡れます 港宿

乾いたこころを まぎらすための
北の地酒は 飲むほどつらい
恋の砂山 恋路浜
連れにはぐれた
鴎みたいに 明日(あす)もまた
泣いて奥能登 ひとり旅
×