雪おんな

(台詞)
今どきの春やったら みんな楽しそうな顔しやはって のんびり
と歩かはる「桜の通りぬけ」 あの造幣(ぞうへい)局が建ったばかりの頃
よう雪おんなが出る言うて こわがられてたときいてます
明治の初めの頃やったんですやろなぁ まだ桜並木ものうて 何
にもない原っぱに何(なん)やこわそうな西洋館が くろぐろと建ってるだけ
やった そんな場所を通る時には淋しゅうなって 淋しゅうなって
だれでも一人でいるのがえらいせつのうて 雪おんなが出る話
は 人恋しゅうなるそんな話やろと思います…… あのころの淀
川は海みたいに広かった言いますしね

うちを抱いたら あんたは凍る
うちを抱いたら あんたは死ぬの
雪おんなの たゝずむ橋は
いつでも白く 白く凍りつく
それなのに あんたの眼つき
ひとときの気まぐれやない
ほんとに ほんとに ほんとに うちを 抱きたくて

こころ寒うて ふるえていたら
冷えた身体を あんたが抱いた
雪おんなの たたずむ橋は
春でも白い 白い雪がふる
淋しさを まつわりつかせ
昔からしってたように
あんたは あんたは あんたは うちを 抱きに来た

うちを抱いたら あんたは凍る
うちを抱いたら あんたは死ぬの
雪おんな 雪おんな
雪おんな
雪おんな 雪おんな
雪おんな…………
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