戦争を知らない僕らの戦争

悪いな、俺は足をやられてる そうかい、おいらは両目をやられた
先に行くんだ、遠くに逃げろと 諦める奴はいなかったけれど
ごめん、私は喉をやられてる このまま死のうと言えなかっただけ

歴史の教科書の半分が叫び声をあげてる
もう半分は落書きされて僕を嘲笑ってる
先生、ミサイルの話なら僕に降り続けてる
消しゴムや紙くずをとめてよ また見て見ぬふりだね
振り向いた時 目につく奴に そら、チョークが飛んでくる

生き延びる術なら惜しまないケモノに比べたらば
傷付ける事すらおそれない僕たちはネズミだね
携帯電話にかじり付いて 互いを監視してる
よそ見するとかみ殺されるぞ だから目を逸らせない
また次の策、また次の策。あぁ、前歯がかゆくなる

ある朝、柏木の机から給食費 盗まれた
結婚したての女教師 ヒステリックな声で
のろまな僕には席がなくて 恰好の餌食だね
僕の席は教室の外で 足がひん曲がってる
犯人探し終えた放課後 次のゲームが始まる

悪いな、俺は足をやられてる そうかい、おいらは両目をやられた
先に行くんだ、遠くに逃げろと 諦める奴はいなかったけれど
ごめん、私は喉をやられてる このまま死のうと言えなかっただけ

散り始めた桜を横目に 解放の時がきた
卒業の歌を歌いながら 柄にもなく泣いた
母なる大地よ 全てが忘られてゆくならば
母なる大地よ 傷跡はなぜそこに在りますか
学び舎の校門くぐればそこは おかまいなしの春です
ため息つけば歴史の教科書は 最後の頁をめくる
×