明るい歌では「幸せ」よりも「望み」を書いていきたい。

―― 曲はどんなときに書きたくなることが多いのでしょうか。

ひとつは、それこそ初めて歌詞を書いたときのように、「あ、ひつじ雲みたい」とか、何かアイデアが浮かんだとき。おもしろいワードが浮かんだとき。それを遊びみたいに繋げていって、物語にしたくなります。もうひとつは、自分自身に言えないけれど伝えたい気持ちがあるときですね。

―― シュガースポット」のコメントでは「明るい曲を書くのが苦手」とも綴られていましたね。明るいマインドのときには曲作りはしませんか?

「幸せ!」ってときに、「私は幸せです!」って曲を書きたくならないんですよね。たとえば、いっぱい寝て幸せな日に、「いっぱい眠れたよ~」って伝えたくはならない感じです(笑)。

―― 明るい曲を書くときには、ご自身のなかのどういうものが核になっていくことが多いですか?

photo_01です。

なんだろうなぁ…。でもそれは先輩と音楽の話をするなかでも議論したことがあるんです。自分が世界をどうしたいとか、他者とどうなりたいとか、みんなにどうあってほしいとか、そういう希望を書いていくと明るい曲になるんじゃないかって。たしかにそうだなって腑に落ちました。自分が幸せな状態で「幸せ」を書くってすごく難しいけれど、明るい歌では「望み」を書いていきたいなぁって思ったりしていますね。

―― にしなさんが作詞面で影響を受けたアーティストというと?

曲を聴くたびに感動するし憧れるのは、野田洋次郎さんとか椎名林檎さんとか。絶対に私には書けないし、読んだだけでそのひとの歌詞だとわかるって、本当にすごいなぁと思います。

―― いろんな歌詞を書いていくなかで、ご自身ならではの手癖みたいなものは出てきますか?

<夜>を使いがち。音の響き的にも短さ的にもハメやすくて。歌詞のシチュエーション的にも夜が多いですね。夜明けぐらいの時間帯の曲はあるけれど、朝とか昼を描いた曲は少なくて。別に曲作りを夜にすることが多いわけじゃないんですけど、なぜか出てくるイメージが夜なんですよね。

―― 逆に、使わないように意識している言葉や表現はありますか?

一人称かなぁ。使わないようにしているというより、むやみやたらに入れないように意識しています。それこそ<夜>と同じで、空白を埋めやすいんですよね。ただ、歌のなかで言っちゃいけないことはないと思っていて。むしろ日常で言えないことを言える場所だと思っているので、あまり「使わない」という制限はない気がします。

―― 作詞のとき、どんなところにいちばん難しさを感じますか?

音の気持ちよさを大切にしたいときは、言葉の筋を通していくことが難しい。メッセージ性を大切にしたいときは、メロをつけることが難しい。どちらに重きを置くかで難しいところが変わりますね。しかも最初に、「今回はこれを重視する」って決められたらうまくいくんでしょうけど、私の場合は決められずに書き始めて、延々と悩み続けていることも多いです。

―― 歌詞単体の内容というより、歌としてのバランスをどう成立させるかで悩むのですね。

そうなんです。だからいったん完成させた曲をレコーディングしたら、耳だけで聴いたときにはどんな印象になるかすごくよく考えます。その結果、歌詞が変わることも結構ありますね。

―― 歌詞を書く上でのマイルールはありますか?

やりたくないときはやらない(笑)。さすがに「ここまでが期限ですよ」って言われたら頑張るんですけど、苦しんでまで書かなくていいかなというか。だからめちゃくちゃ寝かすことも多いです。それによって言葉がぽろっと出てくることもあるし。生活のなかで何か出来事があって、「今のこの感情であの曲を書きたい!」ってマインドになることもあるし。そういう出会い待ちをよくしていますね。

―― にしなさんにとって歌詞とはどういう存在のものですか?

時に遊び道具であり、時に誰にも言えない本心を吐けるもの。私は考えすぎてしまうところがあるからこそ、考えすぎずに吐き出したいなとも思っています。どう聴こえてもいいし、もっと歌詞で遊んでいきたいですね。

―― ありがとうございます! 最後にこれから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

提供曲を書いてみたいです。自分自身が歌うイメージで書くときと、他の誰かが歌うイメージで書くときがあるので、いつか実際にどなたかのために書き下ろすことができたらいいなって。とくにアイドルの方に“THE アイドル”な曲を書いてみたかったりします。思い切り振り切って明るくしてみたい。ファンの方も一緒に歌えて、キラキラしたアイドルが歌うからこそ魅力的な曲を作ってみたいです。


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