“安田レイ”として20歳でデビューする前、いろんな人から反対もされました。

―― では、ここからはニューシングルについてお伺いしていきます。タイトル曲「through the dark」は、二つの愛が“光と闇”というテーマで表現されておりますね。

まずこの楽曲は、TVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』のエンディングテーマで、原作がゲームなので、過去の映像を見てから作ることはできなかったのですが、今回は声優さんたちが使うプロット(台本のようなもの)を読ませていただき、そこからインスピレーションをもらい、主人公の女の子・アイリスの目線で歌詞を書いていこうと決めました。

そして、この作品は“光と闇”がキーワードになっていて、その2つの相反する存在を、今回は歌詞のなかでも大事なキーワードとして使わせていただきました。光と闇というのは、全く別の遠い世界に存在しているように思えて、実はお互いがお互いを求め合っている。そんな気がするんですよね。

―― この歌詞のなかで、いちばん最初に生まれたフレーズを教えてください。

私は大体いつもAメロから順番に書いていくので、<静まる街1人歩くの>というフレーズからスタートしました。アーティストによってはサビから始める方や、毎回違う場所から始める方もいると思うのですが、やっぱり歌詞は1つのストーリーでもあるので、順番に書いていくのが1番やりやすいですね。

―― <光と闇はきっと 切り離せないの>というフレーズからは、闇があるからこそ際立つ“光”や“希望”の存在を強く感じました。レイさんは、ご自身の経験のなかで“光と闇を同時に感じた”出来事はありますか?

まさにライブのときの自分ですね。私、ライブの前って本当に不安で不安で、かなり弱気になったりするんですよね。これって、ものすごく良いものをみんなに届けたい気持ちから生まれる感情なんですけど、失敗したらどうしようとか、みんなをちゃんと楽しませられるかなとか、いつも余計なことを考えてしまうんです。

だけど、ステージに立った瞬間に自分の不安な部分(闇)と、お客さんを目の前に歌えている喜び(光)がぶつかり合って、なんだかものすごいケミストリーが生まれる瞬間ってあるんですよね。デビューしてから何度も何度もステージに立って歌っていますが、毎回全細胞が震え上がる刺激みたいなものがライブにはありますね。

―― ときには<あなたの暗闇>に<わたし>も飲み込まれてしまいそうになることもあるかと思います。そんなときに大切なことは何だと思いますか?

こういうことってあると思います。自分を見失ってしまうというか、どんどんどんどん引っ張られて抜け出せなくなるというか。私はこういうとき、自分ではあまり気づけないタイプなのですが、私のことをよく知っている人に“レイちゃん大丈夫?”と助け舟をもらうことが多いです。やっぱり信頼できる友達やサポートしてくれる家族の存在は大きくて、大切ですね。

―― 「through the dark」で、とくにお気に入りのフレーズを挙げるとすると?

photo_02です。

やっぱりサビですかね。今回は普段あんまり使っていない英語をサビに使ったんですけど、英語にすることによって、その言葉の迫力やストレートさが際立っていいなと改めて思いました。あと、英語で歌うときと日本語で歌うときって、喉の使い方が変わってくるのですが、サビが英語だからこそ、AメロやBメロの日本語の歌詞にも良い影響を与えられた気がしますね。日本語って結構カタイ言語なのですが、英語にはすごくなめらかなフローがあって、全体的に柔らかいフローで歌うことができたと思います。

―― 新曲「true colors」は、どのようなきっかけから生まれた歌でしょうか

この歌詞は実は、何年か前に書いていたメモ書きから生まれた1曲なんです。テーマは鳥かごに閉じ込められた私。きっといろいろと悩んでいたんでしょうね(笑)。鳥かごに閉じ込められているのには、人それぞれ理由があると思うんですよ。それは家族によってなのか、友達によってなのか、恋人によってなのか、もしくは自分自身で気持ちを閉じ込めているのか。

本当はこの窓の向こう側の世界に飛んで行きたいのに、誰かに“君にはできないよ”と決めつけられたり、“危ないからそっちには行かない方がいいよ”と言われたり、“自分には無理だ”とやってもいないのに決めつけたり。そんないろんな葛藤を乗り越えて、鳥かごから抜け出して、窓の向こう側の世界へ飛び立って自由になるという曲です。

私は“安田レイ”として20歳でデビューする前、いろんな人から反対もされました。大人はこの世界が甘くないことを知っていましたからね。でもそんな意見より、自分の歌で勝負したい気持ちが強く、ここまでやってきました。なので、何か夢を叶えたいと思っている人に「そこで止めないで」って言いたいんですよね。もちろん自分の好きな世界だからといって、楽しいことばかりではありませんが、やっぱりやりがいがありますし、私はそんなあなたを応援したいです。この曲でこの気持ちが届いたら嬉しいです。

―― この曲は、冒頭とラストに<ほらまた、今日が始まる>という同じフレーズが綴られていますが、最後まで聴くことで響き方がまったく変わるのが印象的でした。

このコメントすごくうれしいです。実は、そこの歌詞は結構迷いがあって、“終わってく”という言葉に変化させてもいいかなと思ったりもしたんです。でも、あえて同じフレーズで始まり、終わることによって、この言葉に大事な意味合いが生まれるかな、と。曲の頭の<今日が始まる>は、まだ自分のカゴのなかにいるのですが、曲の最後は自由を知って、ちょっと苦さも知って、その上で<今日が始まる>ので、同じ言葉でも、全然違ったニュアンスになったかと思います。

―― 「true colors」で、とくにお気に入りのフレーズを挙げるとすると?

1番最後の<少しつまづいたっていいよと 風が静かに涙をさらって もう無理には笑わないよ ほらまた、今日が始まる>が気に入っています。たとえ自由を知って、大好きな憧れの世界に入れたとしても、そこにパラダイスは待ってないんですよね。思い通りにいかないことの方が多かったり。でも、そのなかでたまに見つける、今まで見ることが出来なかった景色がすごく美しくて感動するんです。この一瞬のために私は生きているんだと思える瞬間があるって、本当に幸せです。

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