「これでいいのかな?」って感じたワードこそ、個性になる。

―― 4曲目「曖情」は、女性側の一人称が<私>、男性側の一人称が<俺>となっている掛け合い楽曲で、まるりとりゅうが楽曲の新境地のように感じました。

photo_03です。

Ryuga ありがとうございます。今までまるりとりゅうがは<僕>という一人称を二人で共有しながら歌うことが多かったんですけど、この歌では“男女の言い合い”というところに特化しました。だからMaRuRiの歌っているところは、僕は歌わない。お互いのパートではハモらないようにしたんです。そして最後の最後だけは、まるりとりゅうがらしいハモりを入れて。この歌がアルバムの一番最後に出来た曲なんですけど、自分でもかなり好きですね。

―― この歌の<俺>は、これまでの楽曲の<僕>とはだいぶ性質が違う気がしますね。1曲目の「わけじゃない」がRyugaさんの実体験だとすると、もしかして「曖情」の<俺>には別のモデルがいらっしゃるのですか?

Ryuga まぁまぁまぁ…、いや、えーっとですね…。

MaRuRi すごい!バレてるじゃん!

Ryuga 逃げ道がなくなりました(笑)。もうぶっちゃけて言っちゃいますけど、おっしゃる通りこの<俺>は僕じゃないんですよ。…逆なんですよ。僕の体験が<私>側なんです。だからこの歌は、そういう<俺>みたいな性格の女性に、恋をしてしまった僕の経験を“女性目線”に変えて書いたんですよ。

MaRuRi えー、私も気づかなかった。なんか、かわいそう(笑)。

―― なるほど(笑)。でもRyugaさんは男性目線でも女性目線でも、すごく共感できる歌詞を書かれますよね。

MaRuRi そうなんですよ。前作の「聞き飽きちゃうくらいの愛を伝えて欲しいの」って曲に関してはもう“THE・女の子”って感じでしたし。どうしてあんな歌詞が書けるんだろうなぁ…。Ryugaくんはちょっと中性的なところがあるんじゃない? あと交友関係が広いから、女友達も多いし、そういうところから女の子の気持ちを聞いたりしているんですかね。

Ryuga まぁそうだね。たとえば「幸せになって」も自分の実体験じゃなくて、友達からの相談がきっかけで生まれた曲なんです。しかもその女性側も男性側もどっちも僕の知り合いで。だけどそのときは、あからさまに女性のほうがかわいそうだったので、彼女を主人公にした曲を作りましたね。あと、中学の頃から、女子会とかに参加してもあまり周りにブーブー言われない感じだったので、女子と絡むことが多かったし、家族や親戚含め、日常的に女性に囲まれているような環境だったことも大きいと思います。それが今、曲を作るときに活きている気がしますね。

―― お二人が、アルバムのなかでとくに印象的なフレーズを教えてください。

Ryuga 「曖情」の<東西南北どこからみたって あなた悪いの一目瞭然 それに騙されてる私なんて それよりもっともっと滑稽だ>ってフレーズは、相手を責めているようでいて、実は自分自身をより責めている表現ができたなって思いますね。あと歌詞とメロディーのハマり方も気持ちが良いのでお気に入りです。

MaRuRi 私は「君と見たい景色」が自分の心境とも重なるので好きです。この歌の<君>はファンのみんなです。とくに<その時が来たら 実際どんな気持ちになるんだろうな>ってフレーズは、まるりとりゅうがとして、夢がどんどん大きくなっていって、だんだんライブに来てくれるお客さんの数も増えていって、いつか本当に私たちがドームとかで歌えるようになったとき、本当にどんな気持ちになるんだろうって、ワクワクしてきますね。毎回歌うときに「あー、そんな日が楽しみだなぁ」って思うし、いつかこの歌をドームで歌える日が来たら泣いちゃいそう(笑)。

Ryuga 僕も「君と見たい景色」は好きですね。自分は今、好きなことをやらせてもらっているけど、でも好きなことをできない気持ちとか、踏み出せない気持ちとかもわかるんですよ。自分自身、大学に行っていながら、親に「歌手になりたい」なんて言いづらい時期があって、ずっと悩んでいたので。だけどいざ、好きなことをやってみたら、諦めない勇気の大事さを実感しているし、何事もまずは挑戦してみなきゃわからないので、そういうメッセージも込めて<君と駆け抜け笑いたいな>というフレーズを書きました。

―― 歌詞面で影響を受けたアーティスト、歌詞が良いなぁと思うアーティストはいらっしゃいますか?

MaRuRi 私は西野カナさんと浜崎あゆみさんが好きですね。まず西野カナさんの歌詞は、どの曲も「わかる~!」ってすっごく共感できるんですよね。でも浜崎あゆみさんは、あまり直接的にその出来事を書かないから、すべてに共感できるかと言ったら違うんですけど、ものすごく切ない気持ちになったりするんです。お二方とも違う魅力があるんですよねぇ。

Ryuga 僕はback numberさんですね。歌詞が良いのはもちろんなんですけど、清水依与吏さんご本人の声で聴くのが一番グッとくるから、そこもすごいなぁって。back numberさんの楽曲は、固有名詞も結構出てくるし、物語や情景の描写が丁寧だから、きっと聴いているひとがその歌詞とまったく同じ体験をしているわけじゃないと思うんです。だけどそこにある感情に惹き込まれちゃうので、そういう歌詞に憧れますね。自分もそういう歌詞を目指したいと思っています。

―― 歌詞を書くときに大切にしていることは何ですか?

Ryuga “違和感”ですね。パッと浮かんですぐに「これ良いな」って思うフレーズは、たぶんすでに世の中にあるんですよ。自分が聴いたことあるからこそ、無意識のうちに正解だと思ってしまいがちなんです。そうするとありがちな歌詞になっちゃう。「これでいいのかな?」って感じたワードこそ、個性になるんじゃないですかね。だから違和感を抱いたときの「この言葉も自分たちが正解にしちゃえばいい!」って気持ちを大切にしています。

MaRuRi 私の場合は、タイトルを先に決めることですね。書くテーマというか。今回の「リピート」というワードも“同じ恋愛パターンの繰り返し”を書きたかったので、すぐに決まりました。今は「ピリオド」ってタイトルの曲を書こうと思っています(笑)。

Ryuga なぜかタイトルだけ英語にしたがる(笑)。

MaRuRi いろんなことの終止符というか、卒業というかね!その軸を先に決めて、膨らましていきたいんです。でも私に関しては本当にまだ浅いので、まずは「リピート」に対するみんなの反応を見たいですね。Ryugaくんも反応を受けたことで火がついて、どんどん曲作りをするようになっていったので、私もその感覚を知って、もっと良い曲を書けるように頑張ります。

―― ありがとうございました!最後に、これから挑戦してみたい歌詞はありますか?

Ryuga 親に向けた感謝の曲とか。

MaRuRi あ、それは私も書きたいと思ってた!

photo_03です。

Ryuga あと、大切なひとを失ってしまった経験をした方に寄り添えるような歌。友達だったり、家族だったり、恋人だったり。そういうときの感情を、まるりとりゅうがだからこそ伝えられる形で、いつか歌にできたらなと思っていますね。でも楽しい曲も欲しいですよね。今回は「らいぶの曲」を入れましたけど、まだまだ明るい系は勉強していかなきゃなって思っています。このままだと悲しい曲ばっかりで、ライブが最初から最後まで病みの空気になりますからね…。

MaRuRi とくに最近は「わけじゃない」を最後に歌って終わるライブが多くて。だから本当は「ありがとうございましたぁ~!」って明るく言いたいけど、曲調的に「ありがとうございました…」と静かに去っていくみたいな。内心、みんなこの終わり方で大丈夫かな…って思っています(笑)。

Ryuga だからもうちょっと盛り上がる曲も増やしていきたいですね。今回から、MaRuRiも作詞作曲をするようになったので、これからはまるりとりゅうがの僕が作った曲、MaRuRiが作った曲、両方を楽しんでいただけたらいいなと思っています。


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