もし<あなた>って呼んでいる曲が急に増えてきたら…。

―― その「新時代を築いていく」という意志も感じられるのが、今作『Never Grow Up』というアルバムですよね。このタイトルは、ポジティブな意味合いで“大人にならない”という気持ちを込められたんだとか。

そうです。この『Never Grow Up』って言葉は“成長しない”というネガティブな意味にも捉えられますけど、そうじゃなくて。私は“子どもみたいなピュアな心でこれからも音楽をしていきたい”という想いを込めました。あとこれは『ピーターパン』の言葉でもあるんですよ。ピーターパンは、まっすぐに何かを信じながら“大人にならない”って言っているじゃないですか。そこが素敵だなと思って。私も音楽をやっているときは、子どものころ「うわー!音楽ってすげぇ!」って魅了された心のまま、これからもやっていきたいんですよね。

―― そんなアルバムの1曲目「Call」は、失恋相手への辛辣な言葉が並んでおりますが、切ない歌詞ですね…。この曲を入り口に持ってきたのは何故でしょうか。

まさに歌詞面で、書き方だったり、選ぶワードだったりが、前作と比べていい意味で変わったなと思えた曲だからですね。一番差別化ができるんじゃないかなと。感情も喜怒哀楽が全部入っているようなイメージです。なんか女の子の気持ちって、ひとつの言葉で処理できるものじゃないと思うんですよ。とくに私はそうなので。

―― <浮気されろ>とか<落ちてけば?>とか言っているものの、相手を気にしているということは多分まだ好きだからでしょうし…。

ね(笑)。「幸せになってね」とかそんな綺麗なことも言えないんですよ。そして、本当に浮気されて<君>が戻ってきたら「フン…」って強がるけど、内心は「おかえり」って思うんでしょうね。

photo_02です。

―― 先ほど曲はすべて実体験だとおっしゃっていましたが、それを知った上で<滅多に送らない 会いたいなって LINE>というフレーズなど読むと、ちゃんみなさんは結構、素直にならずに損をしてきたことが多いのかなぁ…と。

はい、めちゃくちゃ損してきましたね(笑)。私、超奥手なのでこういう恋愛ばっかりなんですよ。「Call」の内容も実際に起きた出来事なんですけど、その帰り道に「このまま家に帰ったら私、泣いちゃうな」と思って、家の下のバス停でこの歌詞を書きました。

―― また、3曲目「PAIN IS BEAUTY」や9曲目「Can U Love Me」の歌詞からは、ちゃんみなさんはただ“強い”んじゃなくて、強がっているときとか、強そうに見せているときもあるんだろうなと伝わってきました。

まさにそうなんですよ。よく「なんでそんなに強いんですか?」とか言われるんですけど、別に自分で「私は強い人間なので!」なんて言ったことありませんし(笑)。だけど、見た目のせいなのか周りが「強いですよね!」って言うから、私も「あ〜そうなのかなぁ」って思ったり。まぁあんまり“傷つく”ってことはないし、ひとりで生きていけるなとも思うけど、それが強さと言えるのかはわからないんですよね。

―― 4曲目、アルバムタイトルでもある「Never Grow Up」も切ない恋愛模様が綴られていますね。これも「Call」のお相手と同じ方に向けた歌なのでしょうか。

いや、これは違うんです。実は「Never Grow Up」は過去曲の「LADY」と「OVER」と「CHOCOLATE」と同じひとに向けて書いた歌で。もういい加減終わりにしないといけないね、という気持ちで書きました。

―― なるほど。「これであなたとの歌は終わり」という意味も込めての1曲なんですね。

そうそう。私は曲を書くときに“友達”だったり“もう別れてしまったひと”に対しては<君>というワードを使うんですね。そして“愛しているひと”とか“付き合っているひと”に対しては<あなた>なんですよ。で、「Never Grow Up」は前半では<あなた>と呼んでいるんですけど、後半ではわざと<君>と呼んでいるんですよね。

―― あ〜!たしかに…!でも<私>は本当にこれで終わりにできるのでしょうか。ラストの<月が綺麗だね>という「I LOVE YOU」の表現法が“綺麗だったね”と過去形ではなく現在形なのが印象的で。

…はい。それは本当にそのとおりで…。でもなんとか抜け出そうとはしているんですよね。まぁこの曲自体のラストの解釈は聴く方にお任せするとして、もしも万が一、私がまた彼とよりを戻してしまったとしたら「無理だった」ってタイトルで曲を出しますので、察していただければと思います(笑)。

―― ちゃんみなさんは「Call」といい「Never Grow Up」といい、特定の方に向けて歌を書いているわけですが、それぞれの<君>は自分のことだと気づいているのでしょうか。

それが「Call」の<君>は気づいてないっぽいんですよね。周りは「これ絶対あいつのことでしょ」ってわかっているみたいなんですけど(笑)。この<君>は本当に鈍感なのでね。でも「Never Grow Up」の彼はさすがに気づいていると思います。もう「わかるよね?」ってワードをめちゃくちゃ入れてますから。

―― ちなみに、ちゃんみなさんの理想の恋愛・理想のタイプとは?

私は超ロマンティストなんですよ。だからデートのときに急に花束とか貰うの、めっちゃ憧れます。あー、でも、実際に付き合うひとや好きになるひとがそうかというと違うし…。歌詞で言えば「Call」の彼も「Never Grow Up」の彼もまったく共通点がないんです。ただ「Call」の場合は、「Never Grow Up」の彼と違いすぎるから恋愛には発展しなかったんだろうなって思います。私も奥手ですけど、相手も奥手すぎた。う〜ん、理想って難しいですね(笑)。

―― 5曲目「Yesterday」も、やはりつらい恋愛経験からの歌ですか?

これはラブソングっぽく聞こえるんですけど、実は仲間に向けて書いた歌なんです。あるとき、その子が大きな失敗をしてしまって、それを私が怒らなきゃいけなかったんですね。でも責任として「怒らなきゃいけない」なんて、10代のころはなかったんですよ。でも二十歳になると、そういう場面もあるんだなって思って、それが結構つらかったんですよね。傷つけられるより、傷つけるほうがしんどいというか。そういう出来事があった日に、帰りの車で書いた歌詞ですね。

―― 先ほど“<君>=友達”、“<あなた>=愛しているひと”のお話をしていただきましたが、たしかにこの歌は呼び名が<君>ですね。

そう、そうなんです。ちなみに<君>は“まだ付き合っていないひと”にも使います。それこそ「Call」とか。だから今、結構<君>って使っている曲は多めだと思います。逆に、もし<あなた>って呼んでいる曲が急に増えてきたら「あ、彼氏ができたんだな」って思ってください(笑)。

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