
1月30日(日)、ちょっとビターな声優あるあるアニメ「それが声優! 」(2015年7月放送)から派生したユニット「イヤホンズ」が、デビューから6周年を記念したライブ『identity』を立川ステージガーデンで行った。
2019年秋に台風、2020年春はコロナ禍と、やむを得ない事情によって4周年LIVEが延期、中止となり、2020年10月にオンライン配信LIVEを行ったイヤホンズは、この日が実に1141日ぶりにファンである「コマクちゃん」を迎えての有観客LIVE。当日に向けWebラジオの生放送で楽しみながらのコロナ禍対応を提案しつつ、振ると音が出るLIVEグッズ「パチパチライト」も用意、当日は初となる生配信中継を同時に行って、万全の感染予防対策を行っての開催となった。
ロビーの“幻の4周年LIVEの展示”を楽しんだコマクちゃん達を、場内では映画「ニューシネマパラダイス」のBGMが出迎える。開演時間になり暗転した会場の大型モニターに、フィルムをイメージした3人の歩みが映し出されたのに続きイヤホンズがステージに登場。
高橋李依は黄色のワンピース、高野麻里佳はブルーのスーツ、長久友紀はピンクのショートパンツという、淡いパステルカラーでそれぞれのイメージカラーを再現した個性的な衣装の3人に、会場も3色のライトを点灯して呼応する。3人とコマクちゃん達の、1141日の想いを込めながらも会えなかった空白の期間を感じさせない熱気に包まれ、「みんな久しぶり」のメッセージと共に「それが声優!2021」で有観客LIVEがスタート。2020年4月に完成したばかりの立川ステージガーデンは最適な建築音響と電気音響を備えたホールとなっており、成長した3人の声が心地良く会場の隅々まで響き渡る。続く「はじめまして」では、ポップな曲調に合わせてステージ上のお立ち台に登った3人の大きな身振りに合わせてパチパチライトのクラップが鳴り響く。「280秒間世界一周 ~幸せのイヤホンを探して~」で「イヤホーン」のかけ声とユーモラスな振りを見せると、最初のMCコーナーへ。
自己紹介と共に、
「6周年で、単独では初めての椅子ありLIVEです」
とイヤホンズジョークも飛び出し和やかな空気感の中、ラップによる息の合った掛け合いを見せる「あたしのなかのものがたり」でLIVEパート再開。ゴスペル調の「わがままなアレゴリー!!!」を、モニターで踊る五線譜に合わせて雄大に、リズミカルに唄い上げる。
再びMCからコマクちゃんに着席を促すと、3人もステージ上のベンチへ座って、チャラン・ポ・ランタンのカバー曲「かなしみ」を披露。モニターに映し出される車窓から見た旅情に合わせ、郷愁を呼び起こさせる曲調をしっとり唄うと、最後にそれぞれの手を繋いでイヤホンズの結びつきを感じさせた。
ここで第1幕終了、休憩タイムのグッズ紹介映像を挟んで第2幕へ。紅いライトに照らされてお揃いのコスチュームに着替えた3人は、「理想郷物語」を、アップテンポでいてムーディーに聴かせ、さらに特撮主題歌風の「一件落着ゴ用心」でハイテンションに盛り上げる。
着替えた衣装は2019年シングルリリース時のもので、
「溜めに溜めてやっと直接見てもらえた」
と改めて有観客LIVEの喜びを伝え、その表題曲であるジャズ調の「チュラタ チュラハ」でスイング、さらに始まりの唄「耳の中へ!!!」を「びっくり×3バージョン」というアレンジで披露する。
フリートークでLIVEグッズの「マフラータオル」が「今治タオル」であることに触れ、タオル談義で盛り上がると、タオル曲「成長!全力シンデレラ」に突入。会場一体となってタオルを乱舞させる。そして演歌も採り入れたハイテンション高BPM曲「サンキトウセン!」に繋げ、サビの「いくよ!」のかけ声に合わせコマクちゃん達は一斉にサイリュームの「UO(ウルトラオレンジ)」を点灯、3人を煌々と照らす。
続いてラジオ番組風の映像で3人それぞれのアイデアによる番組のジングルを披露、「あなたのお耳にプラグイン! ~勇者へのミサ・ブレイヴィス~」で、6年間暖めた壮大なゲーム音楽をイメージした賛美歌を会場に響かせた。この曲に特に想い入れがあるという高野麻里佳が、早速使っているLIVEグッズの黒いトートバッグが猫の毛だらけだったという笑い話で和ませると、「今日は1人1人に目線レスを贈る」のが目標と語り、「エールを贈るつもりで」と前置きして漫画『それが声優! 2017 FINAL 君に届くように』に合わせて制作された大切な曲「応援歌!」をしっとり唄い上げた。
ここでそれぞれのイメージカラーに染まった会場に、締めの言葉が贈られる。
長久友紀「私達は6周年と言いつつ、もう7年目を歩んでいます。また皆さんに逢える機会はあると思いますので、それまで健康にお気をつけて元気に、落ち込んだ時にはイヤホンズの楽曲を聞いて元気を出してください、今日は本当にありがとうございました」
高野麻里佳「さっきお届けした応援歌のように、嗤われたって笑顔を返して、どんな時も皆さんに笑顔を届けたいですし、くじけそうな時にはエールを贈って、ファイト! って言えるような人になっていきたいと思っています。そんな時、苦しい時、悲しい時、楽しい時も、イヤホンズを見ていただいて、一緒に楽しい2022年を過ごしていただければと思っております。ありがとうございました」
高橋李依「この瞬間を応援してくださるみなさんがいなかったら、私達もここに立てなかったし…ステージから見る景色は忘れられなかったし、LIVEできなかったのめちゃくちゃ悔しくて、物理的に凄い泣きました。今日はみんな良い笑顔してて一丸となってる感じがして、LIVEが出来て本当に嬉しかったです。このLIVEが成功! っていうのは、コマクちゃん達が無事お家に帰るところまで含めてだと思ってるので、色々ご不便おかけしますが、みんな仲良く楽しくお帰りください」
そして次が最後の曲である事を伝え、悲しみを癒やすように
「みんなの心を代弁します、今来たばっかり~」
と和ませると、締めくくりの定番の曲「ヨロコビノウタ」を絶唱、1141日ぶりの有観客LIVEを締めくくった。
社会的に声優が認知されるのに先駆けて、「声優」の実像をエンターテインメントに昇華した「それが声優!」出演に際しての結成当時新人だった3人は、今や声優としてもアーティストとしても成長した。ベテラン声優で、「それが声優!」の原作者でもあり、イヤホンズ産みの母と言っていい、あさのますみさんをして驚かせる堂々たるパフォーマンスをみせたのがその証でもある。また、キングレコードにあってエッジの効いたアーティストを揃えたEVIL LINE RECORDSの一翼を担うに相応しいユニットであることも再認識するLIVEとなった。
さらにソニーが開発した新しい音響システムにいち早く対応するなど、声優アーティストの可能性を大きく広げる活動を見せているイヤホンズが、3年分の想いの籠もった6周年LIVEを経て、それぞれの活動がどう進化するのか、そして次に3人が集った時に何を見せてくれるのか。7年目のイヤホンズの到達点を注目したい。
写真:粂井健太
ライター:こもとめいこ♂
◎イヤホンズ6周年記念LIVE「identity」セットリスト
01. それが声優!2021
02. はじめまして
03. 280秒間世界一周 ~幸せのイヤホンを探して~
04. あたしのなかのものがたり
05. わがままなアレゴリー!!!
06. かなしみ
07. 理想郷物語
08. 一件落着ゴ用心
09. チュラタ チュラハ
10. 耳の中へ!!!
11. 成長!全力シンデレラ
12. サンキトウセン!
13 - 14. あなたのお耳にプラグイン!~勇者へのミサ・ブレイヴィス~
15. 応援歌!
16. ヨロコビノウタ
●インターネットラジオステーション音泉「イヤホンズの三平方の定理」