自ら発想したRPG風の物語に沿って制作されたニューアルバムを11月にリリースしたMachico。オリコンアニソン部門8位にチャートインしたその『マチビトサガシ』を引っ提げた1年振りのワンマンライブMachico Live 2019『Symphonic Session』が12月14日（土）に行われた。
熱気で満ちた渋谷duo MUSIC EXCHANGEが暗転すると、赤く光る独特のブレスレットが輝く。ドラムでバンマスのはるき、ベースのニカ、ギターの馬渕、といったバンドメンバーが位置に付き、大歓声に導かれMachicoが登場。ゲーム『この素晴らしい世界に祝福を! ～希望の迷宮と集いし冒険者たち～』OPテーマ『STAND UP!』、ゲーム『この素晴らしい世界に祝福を!‐この欲深いゲームに審判を!‐』OPテーマ『Million Smile』を立て続けに披露、
「楽しくかわいくカッコ良く、突っ走って行くのでついてきてよー」
と、冒頭からブチ上げる。
続いてTVアニメ『りゅうおうのおしごと！』OP『コレカラ』、TVアニメ『このすば』1期OP『fantastic dreamer』を歌い継ぎ
「タイアップ系をガッツリ唄わせてもらいました～緊張しとったんよね、ちょっと」
と、呉弁混じりの軽妙なMCで一息。そして、ファンの度胆を抜いた緑色の髪に自ら触れ
「昨日のニコ生、みんな騙されてるなーと思って（笑）あの時はもう緑だったからね。ウィッグ被って、サプライズで皆を驚かそーと思って…緑毛のプレゼント」
との種明かしで歓声を浴びる。
「めっちゃ人多いよね～『しめじ』みたいだ…」
と、笑わせつつ会場を隅々までくまなく見渡し、キッカケを忘れる天然ボケもあって和やかな雰囲気に。
「ずっと言ってきた生バンドが叶ったっていう事で、次はちょっとアコースティックVerを」
と話すと大きな歓声があがり、ファンも同様に生バンドでのワンマンを待ち望んでいた事が伝わって来た。そして
「もう、帰りたい気持ちにさせるんですけど（笑）この曲は生演奏で唄いたいなって思っていたので」
と、ゲーム『この素晴らしい世界に祝福を! ～希望の迷宮と集いし冒険者たち～』ED『またあした』をしっとりと唄い上げる。
「リリイベとかFCイベントで唄ったんですけど、やっぱ、生演奏は良いですね」
と、しみじみ語り、続いて
「皆で歌えたらなーって」
と次曲『ギミー・ラブ』のコール&レスポンスを全体練習。
「あ、違う。と思ったら、鯉みたいに口パクパクやってくれたら、唄ってるな～って私も思うし（笑）知ってる人が大声出してくれるから」
と、笑いを誘いつつハードルを下げる気遣いもみせ、愛用のタンバリンを持って一体感を演出すると「かわいいコーナー」へ。
ワンマンではフリーで動く事が多かったというMachicoが
「ガチガチに振り付けでやりたかったのでガンバッテミマシター」
と『きっとショコラ』『ピンクトルマリン』で会場中をとろけさせ、『Do You Believe in Magic?』でこのゾーンをしめると、 続いて
「気持ち重い系のゾーンにいきたいんですけど…アルバム曲で、唄った事ない、ダークな、滅茶苦茶良い曲」
と、分島花音提供の『Lunar eclipse』を披露。
唄い手としての大きさを感じさせる圧倒的な声量と表現力で魅せたMachicoに、観客も余韻を静寂で包んだまま暗転、次の『Everlasting Glory』に繋がる。これは事前に決めての事ではなく、想いを受け止めた観客とのシンクロが導いた演出だったとの事。
そして自身作詞で「ネガティブな言葉がストレートに書いてある」という『花音』を唄い
「楽しい事も沢山あるし周りの事あんまり意識してないって思ってたんですけど、（自分と皆を）比べた時にまだまだ…って思う事、マイナスな気持ちを等身大（の想い）を込めて書いた」
と述懐。さらに
「悲しい、悔しい気持ちを経験したからこそ『Everlasting Glory』が唄えるっていうのを色々なところで言わせて頂いたので、並べて一緒に歌って、成長した姿とか、当時より情景を伝えながら唄える様になったよ！ っていう気持ち、これからもよろしく！ 今が楽しいよ！ っていう前向きな気持ちを込めてお届けさせて頂きました」
と、ワンマンだからこその想いを吐露し、大きな拍手が贈られる。
そして
「デビューして7周年を迎えたんですけれど、今年初めてアニメの主役を（『ライフル・イズ・ビューティフル』小倉ひかり役）頂いたんですけれども…私は他の子達と比べたら歩みは遅かったかもしれないし、主役を貰えるのも凄く時間はかかったかもしれないけど…だからこそ、（今まで）一杯経験させてもらっているから、私は遅かったなーって、いうのはあるけど、今、主役が出来て良かったな…って。『出来ない事が沢山ある』って（『ライフル～』のメンバーが）言っとるけど、『私のデビュー当時より全然出来とるよ!』って（笑）自分も初心に戻れるから、そういう経験も…なーんか、こういうゾーンだから喋ってみちゃったりして！（照笑）これからも笑顔を忘れずに歩いて行きます」
と満面の笑みを見せ、大歓声を浴びる。
ここで次が最後のゾーンになる事を告げて大きな
「ええーっ」
が会場から洩れると
「力残ってるなーってこっちは解釈するよ?最後はロック系で攻めるから、みんな最後までついてきてね！」
と応じて『ワイルドカード』、TVアニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』のキャラソン『Soul Believer』、『Zeal』、映画『このすば』テーマ曲『1ミリ Symphony』と駆け抜け、最後にジャンプで締める。
Machicoコールが鳴り止まない中、「ロックに刺々しくいこうぜ！」という鋭利なデザインのライブロゴをプリントしたライブタオルを手に再登場。『ラブ★スト』にノって振り回し、
「みんな最後走り出す準備は出来てる～?」
と、『このすば』2期OP『TOMORROW』に繋ぎ、気持ちを1つに再び走り出す。
恒例の「サラバダー」の儀式と、「Voは?」「Machicoダー」で見送られたが、
「もう一回」
コールに応え再々登場
「気を付けて帰ってね」
と、ファンを気遣った。
記念撮影では
「端っこ見切れちゃうかな?私は見てたからね」
タオル曲でも
「拳でも全然大丈夫だったからね」「今までのグッズもありがとね」
と、終始会場全体に気を配ったMachicoは、サインボールも支柱の影を狙って投げ込んだ。その際、受け損ねた人にその弾んだボールが届けられ、譲った親切な人に今度は別のボールが渡されるのを目撃して驚かされた。
ファンは演者の鏡だとも言われるが、サインボールをお互い譲り合う姿にはMachicoの優しさが確かに映し出されていた。それは或いは、押しも押されもせぬ人気声優でありながら、主役を掴むまでに7年という年月を要した理由なのかもしれない。
生バンドの夢が叶ったMachicoに次の目標を訪ねると、
「生バンドでより大きな舞台に！ 」
を掲げてくれた。優しさと多幸感に溢れる、Machicoのワンマンライブ。より多くの人に届く2020年がやってくる事であろう。
カメラマン：青木早霞
ライター：こもとめいこ♂
