映画綺譚People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | People In The Box | ホテルのロビーで瞬くシャンデリア 鍵を受けとって 屋上にドアを放つ 1000機のカメラが浮かび ぼくらを視ている 赤い目の御加護が 今夜 ありますように 映画を撮るのさ 美しく燃える町の姿 映画になるのさ 勇敢な僕らの行いが 夜を見晴らせ レンズをのぞいて 近くのトラジディも離れればコメディー 導かれたぼくら合図を待っている 至高の芸術 プロペラの風が吹く 映画を撮るのさ 美しく燃える街の姿 映画になるのさ 勇敢な僕らの行いが 決して怖れることはない 墜ちゆくミカエルもミサイルも 火の粉がかかるはずなんてない だってそれは VTR VTR 監督は誰だ 現場には姿は見あたらない 賛美歌のような眼差しを 背中に浴びながら 決して怖れることはない 墜ちゆくミカエルもミサイルも 火の粉がかかるはずなんてない だってそれは VTR VTR |
空は機械仕掛けPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | People In The Box | 大きな音が聴こえた 灼けるように暑い日で 湯気のように漂う人たち 口笛 吹き荒れている 空は機械じかけ 事のはじまりを告げる 遠くでいななく銃声 半導体は死んでいるけれど テレビは生きているのさ のぞき込んでごらん 優しい軍隊が制圧していく ぼくのからだを 決して悪い気分はしない 逆らう理由を奪うあの言葉 うるさい人々 孤独を脅かす 唱えて 好きな言葉を 唱えて 好きな言葉を 唱えて 好きな言葉を 空は機械じかけ さしだされた手を振りほどくたびに こころの奥でごめんねと小さくつぶやく そんな瞬間もやがて 薄れていくだろう それを果たして強さといえるかな 「絶対そうだ」っていってくれたら 今すぐにでもぼくは駆けだすよ きみを根拠に生きていくから ぼくは強くなれるかな 何が起こったって平気? ぼくは強くなれたかな 何が起こったって平気? ぼくは強くなれたかな |
海はセメントPeople In The Box | People In The Box | 波多野裕文 | People In The Box | | もうわずかだ 与えられた残り時間は いつもより 殊更にいつもどおりでいるのさ 森のようで 都市のようで それは滲んだ広告 靄を見下ろして 口を潤して 興奮が沈まるまで さよなら 水に浮かべたトルソ 平気でいよう カーテンの向こう 青く瞬く新宿 さよなら 水を憂かべたトルソ 平気でいよう 無闇やたらとあいさずにいてね この不確かさを 石油ストーブの懐かしい匂いがしている 災いがなんとなくやって来て去るのを 翼ふるわせクククと笑うサモトラケのニケ そこに座って霞の先へ弓を引いたまま やれやれ さよなら 水に浮かべたトルソ 平気でいよう カーテンの向こう 青く瞬く新宿 さよなら 水を憂かべたトルソ 平気でいよう 無闇やたらとあいさずにいてね 今という時間を 醒めてはじめてそれがまぼろしと知るのさ ああこれが去年ならもうとっくに取り乱してた さよなら 水に浮かべたトルソ 海は今日も明日もセメントの色 耳に手をあてて 雨を澄ませ 静けさに満ちた この世界で 耳に手をあてて 雨を澄ませ 静けさに満ちたこの世界で |
天国のアクシデントPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | People In The Box | それはラジオの合図だった 花が降り 空を飾る 森の深くにサイレンを聴く 子守唄のように 耳をそばだてて聴きたい声を焦がれても 今日は予想もつかないニュースがきみに訪れる 黒く深く速いそいつは ぶっとばすのさ 天国のアクシデント 黒く深く速いそいつは ぶっとばすのさ 天国のアクシデント もう二度とこんな日は くるはずはないだろう 人々が口々にいった 花を手向けるよ 未開封の知らせへと 胸が痛むのは ぼくは今日も笑うから 免れた災いをきみが数に入れてくれたらいいのに ぼくにとっては初めての叫んだほどの美しさ 黒く深く速いそいつは ぶっとばすのさ 天国のアクシデント 黒く深く速いそいつは ぶっとばすのさ 天国のアクシデント |
翻訳機People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | ぼくはきみの翻訳機になって 世界を飛びまわってみたい 高い空を斧でまっぷたつに 箱のなか震える心臓 カーテン揺れる 踊る光 ぼくはきみの気高さを掲げ 恥じ入る彼らを見てみたい どこにだって友達はいるよ 誰もぼくらを知らないけど あのひとごみのなかから きみのうまれた街を繋ぐ 歌を誰が歌うのさ 静けさが息を荒げる 電話の向こうで 世界中によくある話は 剥製のように呼吸がない かつてきみは愛した機械で 命を吹き込もうとしたけれど 誰も耳を貸しはしない あのひとごみのなかから きみの育った街を繋ぐ 歌を誰が歌うのさ それはもうすでにそこにあるよ きみはどこへ行ったの 言葉だけ残して きみはどこへ消えたの 風だけおこして きみはどこへ行ったの あのひとごみのなかから きみはうまれた街を失う 歌を誰が歌うのさ 静けさが息を荒げる あのひとごみのなかから きみのうまれた街を繋ぐ 歌をぼくが歌うのさ 双眼鏡をのぞいたなら きみはそこにいる ぼくが飛ばす飛行機のなか 横たわるきみの席はファーストクラス 燃料は楽しかったこと 悲しかったことのせめぎ合い 悲しみには終わりがないね 終わりがないのは悲しいからね ぼくはきみの翻訳機になって 世界を飛びまわってみたい 悲しいね 悲しいね 悲しいね ときどき 楽しいね |
聖者たちPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | People In The Box | 街は眠れど 建物はずっと建設中さ 都市計画遂行中 噛み合う蛇 モーフィングした環状線 エンドルフィン煽って いけよゴーゴーゴー 夜の空に上昇する魂 行進と信仰は常軌を逸したクイズのようだ クイズのようだ まだ空っぽな明日は 限りなく黒に近いグレイ なにかにもなれずに 限りなく黒に近いグレイ 中東でもインドでもアフリカでも 放送する象徴は当然に超高層 今日という日は満ちゆく水位 空っぽな明日に尻尾をまいて 優しさを競う 巨大な空気清浄機 この手のゲームには親の同伴が必要だ 勝算もなく賭けに出たクイズのようだ クイズのようだ まだ空っぽな明日は 限りなく黒に近いグレイ なにかにもなれずに 限りなく黒に近いグレイ ああ 今夜 きみが欲しいのさ 聖者たち ああ 終わり告げて欲しいのさ 聖者たち ああ 今夜 きみが欲しいのさ クイズのようだ まだ空っぽな明日は 限りなく黒に近いグレイ なにかにもなれずに 限りなく黒に近いグレイ ああ 今夜 きみが欲しいのさ 聖者たち ああ 終わり告げて欲しいのさ 聖者たち 聖者たち |
月People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | きみが息を吸うときにぼくが吐くよ ふたりは一対の呼吸 だから夜に見る夢は違うけれど 朝には 未来に 溶けるのさ それはいつだって扉から出入りはしない ノックもせずに窓からやってくるのさ 今日も誰かを蝕む悲しみを ひとは食べておとなになる おお ぼくの話す言葉は同じだけど こころがわからなくなったよ 通じ合わない言葉に意味は無いね やめよう ドライフラワーに水をあげるのは おお 甘いお菓子でみんな逆上せあがってしまったんだ あの口調にはなにかおかしいところがあった たとえ優しさに返答は無くても 胸をはれよ 雲のない夜にきみは駆け出していく 苦しみから解き放たれて 月が欠けていく もうすぐ姿をなくす でもみえるよ 寝息にあわせ揺れる それはいつだって扉から出入りはしない ノックもせずに窓からやってくるのさ 今日も誰かを蝕む悲しみを きみはのみこんだ のみこんだ のみこんだ おおきなくちをあけて おおきなくちをあけて おおきなくちをあけて のみこんだ おお |
気球People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 何千機もの気球が ゆっくりと地上を離れていく 虹色の荒野 年老いたぼくらがいた 植物も思い出も かたちをとどめないよ ここは最後の国 ぼくらは孤独なアインシュタイン 互いの声 耳も貸さず もうすぐおしまいだと 誰もが信じていたけど ここはおじいちゃんとおばあちゃんの国 それはただのながい幼年期みたい トンネル抜ければそこはまた大きなトンネルのなか いつから列はここでつっかえていたのか 眼を閉じ 耳を塞ぐ 誰かの温度も忘れた 迷走するボロい機械 それでも歯車は チクタク回転している 金属の粉振りまいて チクタク回転している 眼を閉じ 耳を塞ぐ ぼくらは孤独なアインシュタイン 震える夜の闇に これは、はじまりかも ただただ気配がしている とっくに無視はできないよ あなたは孤独なアインシュタイン 空想する春のマシン これははじまりだよ! ここは歴史のまんなかさ ここは歴史のまんなかさ チクタク回転している |
球体People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて 今日も 昨日も 明日も 球体に守られて だれもが痣だらけ 誰も気付かない 声をかえせ 泥棒は笑っている 晴れた日 視界から消えたものは 密かに膨らんでいく 僕らはだれも殺せはしない 透明な膜のなか 青ざめた労働者 群れを成しさまよう 砂ぼこり 舞い上がり 顔はほとんど見えない 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 誰も気付かない 声をかえせ 泥棒は笑っている 空がおちてきたところで 指くわえ みているだけさ 噂と架空の痛みさえ 城壁は越えない 声をかえせ 泥棒は笑っている 晴れた日 視界から消えたものは 密かに膨らんでいく 僕らはだれも殺せはしない 透明な膜のなか 空をかえせ 泥棒は笑っている |
犬猫芝居People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 君は証言台に立つ すれ違う瞬間、目があった 世界が始まってから 幾つ目かの革命の昼 地球に煙草を押しつけて 光にまみれて言った 「もっと手を汚して、もっと!」 そうさ、僕ら共犯者さ 君は痛いのが好き? 僕は汚すのが好き 生きたまま死んだふたりに 僕はなってみたい 頭のなか揺らめく星また消えそうだ 僕は孤独な国の孤独な街の預言者だった 誰も聞こうとはしない 沈黙の壁を固めてる 君は痛いのが好き? 僕は汚すのが好き 生きたまま死んだふたりに 僕はなってみたい 舞台の上ふたつに分れてまた演じてみたい また演じてみたい ほんの数秒でみるみる弱って 虫の息になることもある でもそれも今夜までさ てもそれも今夜までさ 君は痛いのが好き? 僕は汚すのが好き 生きたまま死んだふたりに 僕はなってみたい 舞台の上ふたつに分れてまた演じてみたい 君は笑うのが好き 口を塞がれた ああ |
始まりの国People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 架空の国境を跨ごうとしている まばたき忘れ 呼吸忘れ また振り出しに戻った 扉から細く漏れる光 偶然が重なり続ける街 煉瓦のように積まれる 思想を溶かしてみたい 天才だらけの庭 僕はもう生きてはいないかもしれない 眩さに驚き目を開いたまま 若い哲学者の口を ガムテープでぐるぐる巻きに 開いたページ破ってしまえ それは未来からの手紙 君はもう生きてはいないかもしれない 住み慣れた街の亡霊に取り憑かれて 行こうかな 戻ろうかな いっそ踊ろうかな 僕ら自由さ 抜け出して この永い熱病からもう 誰もいなくなって 気配だけがざわついている |
AlicePeople In The Box | People In The Box | 波多野裕文 | People In The Box | | 揺れる日傘泥だらけのひざ まぶたを伏せて闇へ降り行く この坂道を世界は転がる Whole Low is Hollow 野蛮な声に君は微笑んだ コントロールを失った 暗闇のなか体は傾いて まっさかさまさ まっさかさまさ カメラは回る食事のあいまに 時間は溶けて君はあおむけに 湿ったベッド虚ろな眼差しで まどろんでいた まっさかさまさ まっさかさまさ 君のこころは楽団のそばに 砂ぼこりたてて行進している 「君は誰の子だい?」 誰かが耳打ちした まっさかさまさ |