自分のためと誰かのためが、増えてくほどに迷いもするけど…。

 2018年3月7日に、シンガーソングライター“LOVE”が初のベストアルバム『Love rises...2007-2018』をリリースしました。今作は、デビュー10周年を経て、11年目の幕を開ける彼女の音楽の軌跡が詰まった2枚組。それは同時に、音楽活動を通して、世の中と真剣に向き合ってきた人間“LOVE”記録でもあるんです。さて、今日のうたコラムではその収録曲から、時の流れに想いを馳せる新曲「Time Flies」をご紹介いたします!

走り始めたころの靴は
あの教室の隅っこ
あれからもう何足目のコンバース
初めての一人暮らし
今は四角いワンルーム
時々迷い猫みたいに眠る
「Time Flies」/LOVE

 まず<走り始めたころの靴>というワンフレーズから、いろんな想像が膨らみますね。たとえば、主人公の<私>は学生時代、自分にとって運命的な夢と出会って、それを追いかけて<走り始めた>のです。そして<あの教室の隅っこ>の席で、目標を決めたり、叶ったときの妄想をしたり、日々こつこつと努力を重ねた…。そんな夢の始まりの“初心”が刻まれているのが<走り始めたころの靴>なのでしょう。

 やがて時は経ち<私>は大人になりました。あの夢はどうなったのかというと<あれからもう何足目のコンバース>というフレーズから、おそらく今も尚、同じ名前の靴を履きながら、同じ夢を抱きながら、走り続けているであろうことが伝わってきます。心の隅っこに“初心”を忘れずに。ただ一方で、現実に一滴も不安や葛藤がないわけではなさそうです。それゆえに<時々迷い猫みたいに眠る>日もあるのです…。

They say time flies
時は平等っていうけど
ねえ父さん
それって本当?本当なの?

駆け足は今のうちだなって
毎日がせわしないけど
今日よりももっと明日はって
言える事が幸せだよ
「Time Flies」/LOVE

 【Time Flies】とは【光陰矢の如し】を意味することわざ。時の流れは矢が飛んでいくように、はやいものだということです。皆さんも大人になればなるほど、実感しませんか? きっと<私>も然り。ずーっと夢のために<駆け足は今のうちだなって>走り続けてきたからこそ、月日はあっという間に過ぎ去ったのでしょう。しかし“のんびりしたい”ではなく、むしろ<今日よりももっと明日はって 言える事が幸せ>だという<私>。では、夢に一途な<私>が時々、迷うこととは何なのでしょうか。

「あなたが赤ちゃんだった頃は
それはもうあっという間
太陽に向かいのびる花のようで
日に日に大きくなるからついてくのがやっと
私のほうが毎日必死だった」

You say time flies
時は巡ると言うけど
ねえ母さん
それって本当?本当なの?

いつの日か私以外に
大切なものができたら
今よりももっと忙しくて
今よりもっと幸せかな
「Time Flies」/LOVE

 それは<私以外に 大切なもの>のために生きる道もあるということ。具体的にいえば、結婚や子育て、家庭を築いてゆくことです。「あなたが赤ちゃんだった頃は…」そう語るのは<私>のお母さんでしょう。もちろん夢を追ってきたこれまでも、今も、忙しくて幸せ。だけど<母さん>の話を聞いていると、自分が感じている【Time Flies】とはまた異なる“<あっという間>であることの幸せ”を想像するのではないでしょうか。自分のためだけでなく、誰かのために生きてみたいとも、思うのです。

自分のためと誰かのためが
増えてくほどに迷いもするけど
見失いそうな心連れて
あの陽だまりへ
いつの日か一緒に帰ろう

駆け足は今のうちだなって
これからも言ってそうだなあ
今日よりももっと明日はって
欲張りとわかっているけど
今よりももっと誰かとって
願うことが幸せなの
「Time Flies」/LOVE

 ただし「Time Flies」は<自分のためと誰かのためが 増えてくほどに迷いもするけど>決して、焦ったり落ち込んだりする歌ではありません。人生のすべてに対して<今日よりももっと明日はって>、<今よりももっと誰かとって>、願うことができる“幸せ”を歌っているんです。まだまだ伸びしろがある、まだまだ知らないことだらけ、まだまだ出会いたいことだらけ、そう思える“今”の方がこの先にワクワクしますよね…!
 
 そんな“まだまだのワクワク感”を教えてくれるのも、LOVE「Time Flies」の魅力。最近、なんだか月日の過ぎ行くのがはやいなぁ…と思わず嘆いてしまうあなた。是非、この1曲を聴いてみてください!

◆ベストアルバム『Love rises...2007-2018』
2018年3月7日発売
YCCW10335~6 ¥3,000+税