換気扇のように、歌詞として毒を吐き出しているのだ。

 2021年1月13日に“クボタカイ”がデジタルシングル「MIDNIGHT DANCING」をリリースしました。2020年12月にリリースした「MENOU」に続く新曲は、前作のメロウな雰囲気とは異なる軽快なダンスミュージック。日々のネガティブな出来事をポジティブに変えていく。音楽やダンスの持つ力を独特のリリックと軽快なサウンドで表現した楽曲に!

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“クボタカイ”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「MIDNIGHT DANCING」に込めた想いです。彼が歌詞で鬱憤を吐き出すように、みなさんにも負の感情の発散方法はありますか? 何かに熱中することで、心の中の靄が少しでも晴れますように。是非、このエッセイと楽曲を受け取ってください…!

~歌詞エッセイ:「MIDNIGHT DANCING」~

簡単に怒れる人が羨ましい。

人口通りの性格があり考えがある。生憎、僕は怒りのままに怒れず悲しいままに泣けない、なんとも燃費の悪い人間に生まれてしまったのだ。もし僕が車だったらさぞ大量の排気ガスを撒き散らして、物好きのオジサマにコレクションされるタイプのそれだったと思う。

ただラッキーなことに僕は詩書きだった。失敗した遠距離恋愛も、カラオケのアウトロの気まずさも、アイツの煙草の銘柄も、全部歌詞に変えてしまう。カラダに溜まっていく鬱憤を外に吐き出す換気扇のように、歌詞として毒を吐き出しているのだ。逆に言うと歌詞を書かないと生きていけないので、もしかすると僕は天性のアーティストかもしれない。

僕にとってはそれが音楽なだけで、例えばダンスでもスポーツでもなんでも良い。何かに怨念を乗せて熱中している迷える子羊たちを全肯定しちゃおう!ってのがこの曲「MIDNIGHT DANCING」だ。


freaky ×3 flow
いつまでも
記憶スレスレで忘れたいでしょう
クソみたいに溜まる何かを
ダンスやミュージックで変えれりゃ
そりゃ最高
てか君が思うより
君は君のままでいい
醜さも憎さも含めて素敵だよ
今日は構わず踊りなよ



渾身の全肯定。理想の彼氏ばりに肯定しまくっている。特にこの曲のこの部分の歌詞は、無意識に自分に言っている気がする。というのも最近、すごく自分に素直になった。

若い内は多分“自分”というものの輪郭が曖昧で、だからこそ他人に依存し群れて何かに所属したがる。その中で他人を知り、ようやく自分の輪郭が掴めてくる。その輪郭の良い所も悪い所も認めること、それが素直ということの第一歩だと思う。とか偉そうに喋ってる僕も実の所良く分かってない。でもそれで良いのだ。考えることが大事。


「愛してくれ」だなんて
日本語のナイフを押し当てて
息する首筋に手を触れて
涙の轍をなぞってみたいけど
大して強くなくて
今もあの返事を待っている
暗がりの部屋から身体を突き抜け踊り出す



愛されたい、というのは最低限の欲求だ。でも恋というのは、愛されたくても「愛してくれ」と素直に言えなかったりする。そして最終的に「私のこと全然分かってくれない!」と愛ゆえに愛が終わってしまうのだ。

ん~、面倒臭い!ちゃんと言え!!と言っても、思っていることをちゃんと言えない人も沢山いるだろう(冒頭の僕みたいにね)。そんな時はとりあえず、ダンスだ。溜めて噴火する前にとりあえず踊り疲れてしまおう。下の階から苦情が来たら、クボタカイのせいにしてもいいから。


今から教えてあげるよあなたの知らない私のナカのこと
口紅が落ちた夜も マスカラが落ちた夜も



秘密は多いほうがいい。
誰も知らない夜、または知られたくない夜。
キスも涙も大切にとっておきなさい。

「MIDNIGHT DANCING」
僕はポジティブだけの歌は書けない。
そんなの嘘だろと思ってしまう。
でも「色々あるけど頑張ろうぜ!」だったら、分かる。
全国の色々ある少年少女の“色々”が軽くなると、
「MIDNIGHT DANCING」は大成功だ。
この曲で日本中の家庭がディスコになりますように!

<クボタカイ>

◆紹介曲「MIDNIGHT DANCING
作詞:クボタカイ
作曲:クボタカイ・Taro Ishida