この主人公たちはやがて別れの時を迎えますが、決して泣いていない。

 今日のうたコラムでは、作詞家・森月キャスさんによるスペシャル歌詞エッセイを第1回~第4回に分けてお届けいたします。Hey! Say! JUMPやKis-My-Ft2、クリス・ハート、浪川大輔、水樹奈々、X21、Do As Infinity、など様々なジャンルのアーティストに歌詞を提供。さらに、自身が手掛けた楽曲は、これまで『日本レコード大賞』で4回の優秀作品賞を受賞。
 
 そんな目覚ましい活躍を見せる森月キャスさんが、今回の歌詞エッセイ連載のテーマに掲げたのは【別れ】です。第1回では、Do As Infinity。第2回では、X21。第3回では、AAA。そして最終回では、浪川大輔の楽曲について執筆。今回はその第3回、AAAの楽曲「さよならの前に」にまつわるお話を綴っていただきました。是非、あなたの人生における【別れ】を頭に浮かべながら、最後までご堪能ください…!

~第3回歌詞エッセイ:AAA~

時代は平成から令和に変わり、西暦は2020年を迎えました。誰もが「出逢い」に期待する今、敢えて「別れ」について想いを綴るこの連載コラム。第1回、第2回に続き、第3回となる今回は、大切な人との「別れの時」を感じ、迫り来る「その瞬間」をテーマに、AAA「さよならの前に」をご紹介させて頂きます。

24枚目のシングル「逢いたい理由」で初めて関わることができたAAAですが、他にも「サヨナラの行方」「Thank you」「風に薫る夏の記憶」などたくさんの歌詞を歌って頂けていました。

個人的にも大好きなアーティストですし、世間的にも前年リリースの「恋音と雨空」がヒットし波に乗っているタイミングで表題曲の提供が叶った作品が「さよならの前に」でした。ファンの方から「AAAを初めて知った曲」として挙げられることも多く、とても有難く、作詞家冥利に尽きる想いにさせてくれる作品です。

作曲は丸山真由子さん、編曲は清水武仁さん。共に、私も所属するチーム(Blue Bird's Nest(旧tearbridge production))のクリエイターです。

AAAの楽曲は、シングル「Break Down/Break your name/Summer Revolution」からはBlue Bird's Nest(旧tearbridge production)がクリエイティヴコーディネートを行っていて、その流れもありうちのチームのクリエイターの多くが関わっているのですが、「さよならの前に」もチーム一丸となって制作することができた作品の一つです。

メンバーから、「さよならをテーマに」とリクエストをいただいて書いたのですが、せっかくAAAが歌うのだから単なる失恋ソングではなく、もっと深い、大きなテーマを込めたい、しかし、シングル曲として重たすぎても良くない、と大変苦慮しました。

大切な人との「別れの時」が迫る瞬間、人は何を想うのでしょうか。それまでが幸せであればあるほど、別れが辛く感じることでしょう。重ねた日々を後悔する人もいるかもしれません。愛情が裏返り憎悪に変わる人もいるかもしれません。

“終わりが怖いなら始めなければいい”

時々耳にする言葉です。どうせダメだからと高をくくり挑戦を止めてしまう、失敗の経験の多い大人の人にありがちな傾向ですが、最近では若い人も、この考え方をする方が多いようです。

ですが、この歌詞の主人公は違いました。

“終わりが怖いなら始めなければいいと
出逢う前の僕らなら信じてたね
疑いもせずに”


愛し合えたことが幸せなことだと、たとえ別れを迎えるとしても出逢えてよかったと、想えるようになったんですね。この主人公たちはやがて別れの時を迎えますが、決して泣いていない。涙を流してはいるかもしれませんが、笑顔なんです。

“君にさよなら
告げるため僕ら
あんなに愛し合ったのかな
これが二人の結末と知っても
好きだよって君に伝えたい

君にさよなら
告げるまででいい
誰より傍(そば)にいて欲しい
そんな二人の結末を知っても
出逢えてよかったと想い合えるまで”


考えるまでもなく、有限の時間を生きる我々は、どんなに愛し合っていてもいつか別れの時が来ます。だからこそ、出逢ってから別れるまでの時間が大切なんですね。別れすらも超越するほどの愛情、見つけたいものです。

あなたには、大切な人がいますか?
今日、その人を大切にしましたか?
その人がいない未来を想像できますか?

<森月キャス>

【第4回「浪川大輔」編の更新は1月20日(月)です!】

◆Information
森月キャス所属
Blue Bird's Nest(エイベックス・マネジメント)
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◆森月キャス
『言葉の達人』登場回