7組のアーティストの“スランプ脱出法”をご紹介…!

じっと耐えて嵐が去るのを
待ったほうがいい時期というのがある。
目の前にある障害物を避けて
遠回りしたほうがいい場合も多々ある。
(真梨幸子『クロク、ヌレ!』より引用)


 心が挫けそうなとき、ピンチに遭遇したとき、スランプに陥ったとき、あなたならどうやってその時期を抜け出しますか? 今日のうたコラムでは、そんなときの参考になりそうな言葉をアーティスト過去インタビューよりご紹介。彼らには、どんなスランプがあるのか or あったのか。それらをどのように越えているのか。7組の回答に注目です…!

<井上苑子>
曲作りのスランプは常にあります(笑)。歌詞が毎回わりと行き詰まるんですよ。タイアップの曲だとテーマがあるじゃないですか。それに沿って自分があまり深掘り出来ないときに、かなり模索しますね。また1から考え直したりとか、まったく違う視点からみるようにしてみたりとか、そうやって最終的にはなんとか抜け出します。

<MACO>
スランプに陥るのは、歌詞を書くときが多いです。みんなからあんまり「良いね!」って言われないから…(笑)。まだ曲が世に出る前に、MACOがその歌詞を初披露すると、スタッフのみんなが「ん?」ってなるときが結構あるんですよ。だから今もその瞬間が一番緊張しますね。でもファンのみんなが聴いて「ん?」ってなる状況が一番怖いので、リリースされる前にものすごく試行錯誤します。

アルバム『FIRST KISS』や『love letter』あたりでもかなり悩んでいましたね。私はいつも100%自分が書きたいことを書いているんですけど、ニュアンスとか言い回しが、他の人に伝わりづらいことも多いみたいで。この表現じゃダメなんだって気づかされるというか。そういうときに「こうしたらもっとたくさんの人に届くよ」というアドバイスをいただいて、頭を悩ませながら改善していきますね。

自分の言葉で伝えたい。でもたくさんの人に届けたい。その両方のバランスを取るのは大変ですけど、今は一番そこが大切ですかね。自分が信頼できるスタッフの方たちと、その歌詞の最高到達地点まで行けるように作り上げてゆきたいという気持ちが、最近より強くなっています。

<阿部真央>
スランプ期は結構ありまして。とくに3枚目のアルバム『素。』のときは、それまでの2枚のアルバムでもう学生時代のストックを使い切ってしまっていたので、アルバムのために新たに曲を作るということを初めてやったんです。

まずストックがない不安があったし、ツアーなども並行してやっていくなかで書く時間もマインドもなかなか作れなくて。そのときは相当大変でしたね。でも結果的には、その疲れた気持ちを曲にした「モットー。」が生まれたりもしたので、わりと1、2枚目のアルバムと同じように、歌詞に“素”を出せたなという感じはしますね。

<コレサワ>

スランプ期には、書けないというより、降りてこない。私は書こうと思って書くのではなくて、自然と曲ができるタイプなんです。でもメジャーデビューをして、初めて“締め切り”がある状況になって。そこで「あ~出てこないなぁ…」という壁にぶち当たりました。でもまぁ「出てこなくても、死ぬわけじゃないから!」って思っています。

あまり自分を追い詰めずに「できなかったらしゃーないわ!」くらいの感じでいる。そうやって気持ちが楽になった時にこそ、曲って降りてくることが多いので。曲作り以外でも、楽になりたいときとか、すごく嫌なことがあったときとか、明日は行きたくないなぁってときには「でも死ぬよりはマシやから、頑張ろう!」って思うようにしています。自分の心に逃げ場をひとつ作っておくことって大事なんですよね。

<柴田淳>
2014年12月に『バビルサの牙』というアルバムをリリースしたんですけど、その1年半くらいほど前に大失恋をしまして…。その痛手から目を背けるために1年半で3年分くらいの仕事を詰め込んでしまったんです。仕事をしている時は、楽しいし必死だから、傷ついていたことなんて忘れていられる。だから悲しみに向き合わずに過ごせたんです。でも、それが終わった瞬間に、一気に身体も心も壊れてしまったんですよね。

しかも、痛みを感じないようにしていた期間が長かったからこその反動っていうんですかね、ものすごく膿がたまっているような状態で。時間が解決してくれるどころか、傷の量がかなり増えてしまっていて…。その状態で『バビルサの牙』を作らなければならない時期になり大変でした。バビルサは、ジャケットを見るだけで今でも涙がこぼれてきてしまう、本当にボロボロの私が形になっています。

初めて本気で「仕事やめようかな」って思いました。なんで歌っているんだろう、なんで仕事しているんだろう、なんで生きているんだろう…ってところまでいってしまって。それは単に「死にたい」とかそんなことではなくて、漠然と「もう疲れた。自由になりたい」って思ってしまったんです。

でもそうやって“身も心も休みたい、好きな人もいない、どうしよう”って時にちょうどテレビ出演の話をどんどん頂いたので、良い意味で時間を埋めることができたんですよ。全く違う世界に飛び込むことは何もかも新鮮で、心のリフレッシュにもなり、結果的に私の心を救ってもらいましたね。

<ゴールデンボンバー・鬼龍院翔さん>
曲作りのスランプはあまりないですね。ただ「女々しくて」が売れ過ぎた時は、もう一曲こんな大ヒットを作り出さなきゃと思っていたけど全然できなくて、スランプなのかなぁと思っていました。でもそんなこと関係ないんですよね。

「女々しくて」だって、リリースした時は売り上げ77位で、そのまますぐ圏外になって、しばらくはファンの間でしか知られていない曲だったんです。それが2年後くらいに何故かヒットしましたからね。どんな曲がいつ何で流行るかなんて誰にもわからないんですよ。だから、僕はもうヒットしなきゃという悩みからは脱出して、自分が良いと信じる曲を作るのみです。

<erica>
【告うた】が“片想いソング”だけを意味していた時期は、スランプに陥りました。告白のラブソングとなると、どうしてもワードが限られてきまして。いっぱい作っていると「これ前にも使ったな…」というフレーズが出てきちゃうんですよ。それで「違うワードに変えなきゃ」と言葉を選び直したりしていました。

でもそれだと結局、作品としてしっくりこなくて。最初に選んだ言葉が「これを伝えたい」という素直な想いで、やっぱり他の言葉では越えられないんですよね。だから「たとえ何回使っていたとしても、使いたいと想った言葉を入れよう!」と決めてからは、だいぶ楽になったような気がします。


 井上苑子やMACOのように【とにかくより良い形を模索する】か、阿部真央のように【スランプ期の気持ちさえ何かに昇華する】か、コレサワのように【自分の心に逃げ場を作っておく】か、柴田淳のように【全く違う世界に飛び込む】か、鬼龍院翔やericaのように【スランプをきっかけに本当に大切な信念にたどり着く】か。

 わたしたちの恋愛や仕事や勉強や人間関係、あらゆる悩みにも通じる“スランプ脱出法”ではないでしょうか。前に進みたいのに、何をどうしたらいいのかわからないという方。是非、自分の心身に合った方法を試してみてください。そして、いつかそのスランプ期のことを笑って話せる日がやってきますように…!