あのアーティストの“子ども時代”とは…?本日は前編!

大事なことには出会い続ける。
たぶん、四十になっても、五十になっても、
出会うんだろう。だけど、
若い頃に出会った大事が人生を決めてしまう。
幼い胸に刻まれた大事に従って、
ひとは生きていくんだと思う。
(宮下奈都『つぼみ』より引用)


 こちらは作家・宮下奈都さんの小説『つぼみ』に綴られていた一節です。ひとの性格は二十歳を過ぎるとほとんど変わらなくなるとはよく聞きますが、それは二十歳以前の『幼い胸に刻まれた大事に従って』生きてゆくからなのでしょう。そして音楽もまた、それぞれのアーティストの『若い頃に出会った大事』が大きな“核”になるのだと思います。
 
 そこで今日のうたコラムでは、これまでの歌ネットインタビューをもとに、様々なアーティストの“子ども時代”についての回答を一挙ご紹介いたします!本日の【前編】では、田邊駿一(BLUE ENCOUNT)、見田村千晴、米津玄師、奥華子、尾崎世界観(クリープハイプ)、erica、Rihwaの言葉をピックアップ。じっくりとご堪能ください…!

<BLUE ENCOUNT 田邊駿一(2019年取材)>
小学生の頃からカラオケがめちゃくちゃ好きで。家族も歌が好きなので、よく連れて行ってもらったんですね。中学生になってからは、お小遣いを貰うようになり、毎週土日は友達とカラオケに行っていました。音楽というより、ただただ歌うことが大好きだったんです。あと、あの校区で一番歌が上手かったという自信もあって(笑)。結構、人気者だったんですよ!みんな「田邊とカラオケ行きたい!」って誘ってくれるし、音楽の時間も僕の取り合いだったりして。あの頃、ハモネプが流行っていたこともあり、合唱コンクールの取り組みもまるでスポコンでしたね。歌に関する良い思い出は、すべて中学のときに詰まっている気がします。

<見田村千晴(2013年取材)>
小さい頃から親にクラシックをやらされていて、練習が嫌いでクラシック自体も好きになれなかったんです。でも、歌うことは大好きで、流行りのJ-POPをよく歌っていました。なかでも、一番影響を受けたのが、矢井田瞳さんです。すごく楽しそうで自由に大きく歌っている感じが好きで、歌詞も人柄というか、不器用な感じに惹かれました。

<米津玄師(2015年取材)>
ずっと絵ばかり描いている子どもでした。ドラえもんとか「少年ジャンプ」のナルトとかワンピースが大好きで、マンガ家に憧れていましたね。絵は、幼稚園くらいのときから自然に描いていたんですけど、母親が教員免許を持っていてイラストを描くのも上手かったので、そういう血なのかなと思います。

一番最初に影響を受けたのは、小学5年生のときに流行った「FLASHアニメーション」で、なんかしょうもないイラスト映像に音楽が乗っている動画がたくさん投稿されていたんですよね。それまではあんまり音楽を聴かない子どもだったんですけど、アニメは好きだったので、そこのアニメーションを通じて音楽にも興味を持つようになっていきました。

<奥華子(2019年取材)>
まだ幼稚園に行く前くらいの話になってしまうんですけど、父親が童謡大好きでいつも歌っていましたね。私はそれにピアノで適当に伴奏をつけたり、一緒に歌ったりしていたんですよ。だから実は自分のルーツも童謡で。短い言葉で深い意味を伝える。そして、聴いたらすぐに歌える。覚えやすい。そういうところは、歌詞を書く面でも大切にしてきたところだと思います。

<クリープハイプ 尾崎世界観(2015年取材)>
他の教科は全く出来なかったけど、国語だけは得意でした。まず文を読むのがすごく好きで、授業は聞いていなくてもいろんな教科書の文章を読んでいましたね。駅に置いてあるフリーペーパーを取ってきて読んだりもしますし。文字を読んでいると落ち着くんですよね。ウトウトしているときに周りで人が話しているのも子守唄のようで心が安らぐんですけど、それに近い感覚です。

あと、子どもの頃から家で“かぐや姫”というグループの曲が当たり前に流れていたので、音楽ってこういうものなんだろうなぁとなんとなく思っていました。それから自分でもCDを買ったりして、改めて聴いてみたときにすごくいいなぁと思いました。自分の個人的な気持ちを語りかけるように表現するというところでも影響を受けていますね。

<erica(2019年取材)>
私は、両親が仕事で忙しくてほとんど家にいなかったので、おじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらっていたんですね。学校の送り迎えとか、お弁当とか。そして、車のなかではいつも演歌が流れていました。その世界観には大きく影響を受けていると思います。だからルーツは天道よしみさんとか美空ひばりさんの曲なんですよ。自分がわかりやすいシンプルな言葉をチョイスするというのも、きっと演歌に通じている気がしますね。

<Rihwa(2015年取材)>
もしタイムマシンがあったら戻りたいと思うのは、幼稚園、小学生の頃で、常に(歌詞を書くとき)その頃の自分に問いかけている感じはありますね。あの頃は、自分のお城でいつもワクワクしながら遊んでいて、人生のなかで一番クリエイティブだった時期なんですよ。だから“その時の自分だったら何するだろう?”って問いかけたり、逆に今の自分があの頃の自分に言ってあげたいことなんかを歌詞に落とし込んでいくことが最近は多くて、そうすると良いものが出来ている感じがしますね。どんなにイライラしていても、あの頃の自分に何か言うって考えると、姿勢を正さなければっていう気持ちになる。小さな頃の自分にいつも支えられています。

【後編に続く!】