親父殿よ

たまに田舎に帰っても 相変わらずさ 会話が少ない
若い息子よりテレビっ子 ニュース スポーツとにらめっこ

息子が自信をなくして帰ってきたよ
そんな気持ちを知ってか知らずかあなたは
若い頃の話を聞かせてくれる
そして最後にポツリ 「人生は不思議さ」と

親父殿よ あなたの生き方が
正しいか間違いかなんて分からないけど
一つ一つ 顔に刻みこまれた 深いシワがいとおしいのさ

たまにじっくり話そうと 食卓囲み会話をするけど
男同志だと照れくさい ビール 焼酎で照れ隠し

「お前とこうして飲む日が来るってことは
俺もずいぶん年をとってきたものだ」と
嬉しそうに微笑む あなたを見ては
ふっとぼんやり思う 「だんだんと似てきた」と

親父殿よ あなたの青春が
かっこいいか悪いかなんて 分からないけど
今の俺より 泥と汗にまみれて 生きてきたこと 伝わるのさ

親父殿よ どの親父様が
勝ったか負けたかなんて どうでもいいこと
家族のため いつも走り続けた
そんなあなたが誇らしいのさ
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