アドバルーン

おやすみと君が言って
受話器が音を失くして
それきり土曜日まで 僕は笑えなくなる
仕事場の裏口で
煙草ふかして思った
こんな日をあとどれくらい
僕はごまかせるのかと

持ち前の明るさは
いつしか影をひそめ
同僚も距離を置き
昼休みが嫌だった
あの頃まだ空には アドバルーンが浮いてた
デパートの屋上で
ひとり空を見上げてた

帰りのバスを待っている
いつもと同じ顔ぶれ
そそくさと列を詰め
僕は小銭を取り出す
君は頑張ってと 繰り返し言うけれど
頑張ることなんて何も
何も持ってなかった

答えが見つけられない時は
答えなんてない時で
気付けば手にしてたなんて よくある話さ
退屈も憂鬱も 見方を変えたなら幸せ
忘れた頃に振り向いて
笑い飛ばせるさ

門限は11時
みんなボヤいていたっけ
僕はやることもなく TVを見て笑ってた
次の日のことなんて
何もかも分かってた
考えたくないから
考えないようにしてた

東大の赤い門を
毎日横目で見ながら
湯島天神の坂
靴音鳴らして走った
君は頑張ってと 繰り返し言うけれど
頑張ることなんて何も
何も持ってなかった

答えが見つけられない時は
答えなんてない時で
どこかに転がってたなんて よくある話さ
やり切れない夜から生まれる
やけに薄っぺらい朝
それでも細い僕の背を
照らし続けてる

答えが見つけられない時は
答えなんてない時で
気付けば手にしてたなんて よくある話さ
退屈も憂鬱も 見方を変えたなら幸せ
忘れた頃に振り向いて
笑い飛ばせるさ

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