湯けむり女の宿

今宵 ひと夜の 慰めと
知って いるのに 胸の懐(なか)
忍び待つ身の 切なさを
夜汽車が 虚しく 涙を誘う
湯けむりかすむ 忍び宿

湯船に 浮かんだ 月灯り
あなた 来てよと 身を責める
罪と知りつつ 堕ちてゆく
一途に 愛した 未練の糸も
湯けむりかすむ 忍び宿

宿に 残した 置手紙
後ろ 髪引く 戻り橋
遠くにかすむ 宿灯り
無理に 断ち切る 私のこころ
湯けむりかすむ 忍び宿
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