秋晴れの空の下で

冷たいガラス戸を飛び越えて
朝陽がせわしなく揺れて
「昼過ぎまで寝よう」って 目論見は早くも崩れる
起こされた僕はボサボサ頭のまま
外に飛び出して
「ジョギングでもしよう」って
靴紐をきつく結んだ

寝不足なのに 今日は気分が良い
背伸びして手を広げて深呼吸しよう

乾燥している空を見ていたら
泣いた君を思い出したよ
“さようなら”の日と似ているから
胸の糸がほつれそうだよ

名も無い通り沿いを
赤い鼻して走り続けながら
埋めていたはずの思い出を
またほじくり返している
腰を曲げた老婆が
固い土の上で落ち葉を掃いて
顔見知りでもない僕を見て
ちょっと微笑んだ

いつもくれていた 小さい温もり
これからはちゃんと独りで探して行くから

追い風に背中押されて
君の名前を呼んでみたんだよ
甦る全てのシーンを
塗り潰すように繰り返す

さようなら…

「逢いたいよ」「大好きだよ」
そう呼び合えた僕らは居ない
秋晴れの空の下で
最後に抱き締めるように
さようなら
×