浦安の黒ちゃん

「近頃何だかお前 元気ねえみてえだな」と
忘れかけてたころに 電話がなる
「何かいい事ねえか」と「身震いするような女に
会いに街へ出よう」と俺が言うと

買ったばかりのジープで湾岸道路飛ばし
浦安の黒ちゃんはやってくる
とりあえずお前の家へ今からすぐ行くから
大阪行きのチケット摂ってくれと言う

赤い靴下をいつものぞかせて
「つまんねえ映画ばっかりだな」と冷蔵庫を開け
YEBISUビールにえだ豆をつまみながら
浦安の黒ちゃんは兄貴ぶる

8:30分東京駅プラットホーム
俺達はまずい弁当ぶら下げて
個室に乗り込み 売り子に声をかけ
浦安の黒ちゃんは 頭をかく

ルルルル ルルル…

釣と女と映画を語り始めると
俺はガムを噛みながら 窓の外を見た
田んぼのあぜ道を白いヘルメットかぶり
自転車通学の学生が気になる

名も知らぬ街で名も知らぬ風に吹かれ
「あいつもきっと夢があるんだな」って
急に黙りこくりタバコに火をつけて
浦安の黒ちゃんは目を閉じた

あてもなく俺達は大阪へ着いた
「これからどこへ行くんだよ」って俺が言うと
「わかんねえ」とあっさり黒ちゃんが言ったから
「赤い靴下やめろ」って言ってやった

とりあえず車に乗り南へ走らせた
大阪通天閣に二人で昇った
しょうがねえから俺達流れるネオンサイン見て
バカヤロウって小さな声で言った

しけたホテルのバーじゃ性に合わねえから
俺達は屋台でうどんをすすった
さっぱり色気なしで悪かったなと
なりふりかまわずどんぶりをすすった

よろめく足取りのふらふらの街で
ド真ン中を俺達は歩いた
とんがったまんまの 黒ちゃんの背中が
大阪の街で小さく見えた

ルルルル ルルル…
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