霧の出船

捨てていいのと くちびるかんで
肩を落した 影ひとつ
ランプも暗い 止り木の
片すみに そっと名前をかいて泣く
流しのお兄さん
どうぞ止めてよ その唄は
あの人 好きだった 演歌節

どうせ待っても 帰って来ない
船は男の 恋ごころ
ゆらゆらゆれる こぼれ灯に
裏窓を そっと開ければ波の音
何んにも聞かないで
つらい恋でも 想い出にゃ
いいこと ばっかりが 残るのよ

夜霧がひくく はうような
波間から ぼうっとかすんで船が出る
流しのお兄さん
どこへ行くのよ あの船は
あの人 いるところ 北の果て
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