あすなろの木

ひのきになりたくて 若いあすなろは
都会に出てあわない 水を飲み
大人になりました

派手な暮らしの中 集まって来た人は
お金がなくなったとたん 蜘蛛の子を
散らすように 去りました

ふと よぎるのは 母の顔
ひのきになれなかった僕を 笑うかな

何もない ふるさとに 背を向けて来たけど
しあわせは しあわせは そこにあった気がします

あすなろの木の下 誓いを立てた日々
幼い頃のように その幹を
抱きしめてみました

海から吹く風が 山の葉を揺らして
こんな僕をふるさとは 変わらずに
受け止めてくれました

ずっと 待っていたと 友の声
はりつめていた糸が切れて 涙声

追いかけた 夢を今 手放す時が来ても
生きていれば 生きていれば また夢は見れるから

あたたかい ふるさとの 夕やけ空がささやく
あすなろは あすなろの そのままでいいよと
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