あぶな坂

あぶな坂を越えたところに
あたしは住んでいる
坂を越えてくる人たちは
みんな けがをしてくる

橋をこわした おまえのせいと
口をそろえて なじるけど

遠いふるさとで 傷ついた言いわけに
坂を落ちてくるのが ここからは見える

今日もだれか 哀れな男が
坂をころげ落ちる
あたしは すぐ迎えにでかける
花束を抱いて

おまえがこんな やさしくすると
いつまでたっても 帰れない

遠いふるさとは おちぶれた男の名を
呼んでなどいないのが ここからは見える

今日も坂は だれかの痛みで
紅く染まっている
紅い花に魅かれて だれかが
今日も ころげ落ちる

おまえの服があんまり紅い
この目を くらませる

遠いかなたから あたしの黒い喪服を
目印にしてたのが ここからは見える
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