遠花火

下駄がからころ 後追うように
浴衣の裾に 絡みつく
夜空にひとつ またひとつ
肩を寄せ合う 橋の上
瞬間(とき)を彩る 遠花火

燃えて広がる 菊一輪も
音と光の すれ違い
川面(かわも)にひとつ またひとつ
添えぬ二人に 似た運命(さだめ)
消えて儚(はかな)い 遠花火

縋(すが)りつきたい 思いの丈(たけ)を
秘めて髪梳(す)く いで湯宿
鏡にひとつ またひとつ
今宵かぎりの 花化粧
咲いて散りゆく 遠花火
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