シャンプー

ふたりで過ごす跡が残る
少し広い十畳
散らかるベッドとか
出しっぱなしのドライヤーは
この後君がまだ使うから

「君の髪の匂いは落ち着く」
これを言うの何回目だっけな
いや今日は同じ髪の匂いだ
さらに愛おしくなる夜

尊くて愛おしいだけの時間が無限にこのまま
続くなんて僕に
思わせた日々が悪いんだ

ギュッと抱きしめていたら何もかもどうでもよくなったよ
このままうまくいく気がしていたんだ
髪の匂いにつられたままボヤけた二度寝が心地良かった
今更遅いけど

姿見の前で着替える
下着姿の君と目が合って
ほくそ笑んだ笑顔を見ていると
全てどうでもよくなったんだ

きっと明日も同じ朝が訪れるなんてまた思ってる
今思えば恥ずかしくなった
食べ残した弁当が朝になって冷たくなっている
気にしてなかったけど

同じシャンプーを使う日
コンタクトを外しても会える日
当たり前に転がる幸せが
近すぎて見えなくなる

ギュッと抱きしめていたら何もかもどうでもよくなったよ
このままうまくいく気がしていたんだ
そっと差し込む朝日が先のことを忘れさせてくれる
今更遅いけど
君はもういないけど
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