夢を見ていた金魚

初めて買った金魚鉢
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

大事にしてた 名前も付けたのに何故かしら?
金魚鉢のぞくの怖かった
この部屋に私以外の命の気配をただ少し増やしたかっただけよ

一度も口吻する事は無かった
赤くて無力なあの子の唇

初めて買った金魚鉢
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

やけに涼しい夕焼けによく似た悲しい色が独りの午後に滲んだ
この部屋にさげすんだ空気だけを残して空っぽの鉢は私を笑う

何度も接吻しておけばよかった
あまりに非力な私の唇

きっと私が夢を見てたの
それはまだ見ぬ満ち足りた世界
考えてはじっと胸を焦がしてた
小さな体ぶつけながら 必死でそう、泳ぎさまよって…

初めて買った金魚鉢
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹 水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた…

私に残された最後の夏も静かに手を振った
あなたと過ごした最初の夏が静かに息を止めた
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