とまり木

改札口は喧騒を
吐き出しこそすれ吸い込まず
滞った駅前の眺め その上澄みに
解体中のビルの肋骨

抜き足差し足 落ちゆく夕陽
季節の果てを報せる風

待つことを嫌い ひとりで
待たれることを嫌い ひとりで
“ここまでを来れたんだ
ここからを行けないわけがねーさ”

L字のカウンターの隅
空いたグラス越しに揺れる外国の歌
明日に踏み出す寸前の
心地良い躊躇に頬杖をつく

半分に割れた白い月
痩せた街角に眠る花

離れることをおそれ ひとりで
出会うことをおそれ ひとりで
“ここまでを来れたんだ
ここからを行けないわけがねーさ”と

そう思い続けることで
そう信じ続けることで
ここまでを来れたんだ
ここからを行けないわけがねーさ
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