小さな丘の木の下で

小さな街を見下ろす
小さな丘の上の
春の日の木の下で出会った

シャイゆえに強気な少年と
ウソが大キライな少女の
尊く甘く長く永い物語さ

それから何をするにも一緒だった
夏の太陽も秋空も冬の星の下も

気づけばずっと小さく感じる
あの丘の木の下で
君を世界一幸せにするねと、6月のキスをした

「私が死ぬまで死んではダメよ」なんて泣き笑う彼女
「大丈夫、君が最後に見るのは僕さ」なんて片膝をついた彼

小さな家を建てて
いつもの丘の上の
木の下で気づけば増えていった

大量の洗濯物と
賑やかな笑い声と
あの日のまま変わらないふたりの姿

彼はずっとこんな日々が続くと思っていた
そんなある日彼女が突然旅立った

小さな街を見下ろす小さな
あの丘の木の下で
ウソがキライな彼女らしいとその寝顔にキスをした

「君を世界で一番幸せにはしてあげられなかったかもね
だって世界で一番幸せだったのは僕だから」と彼は泣いた

愛する彼女が見下ろす
小さな丘の上の
木の下で彼は今日も暮らす
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