狼青年

「僕と俺」とを使い分けて
心ゆくまで嘘を吐(つ)く
怖いものを知らない真実が冷たく光る

臆病なフリしてないで
さぁ 面影重ねて迷い込んで
きみを護(まも)る狩人はとっくに美味しく、ね

名前なんていいから好きに呼んで忘れて
理由ばかり欲しがるアリバイを壊して
真面目なキス まるで手品のよう
暴くブラウス 床に落ちるベルト

狼少年、もう一度駆け出したらもう帰れない
たとえ誰の涙が胸に光っても
遮(さえぎ)るものなどなにもない 不実な心が眠るまで
このまま彷徨(さまよ)い続けてゆく僕は、狼青年

嘘吐き呼ばわりする側(そば)で指から煙を奪い取って
本音を吐(は)くきみに、僕も種明かしを

「あいつのキスそっくりでしょう?きみがいつか泣かせた」
さよならは今夜 俺らは街を出るから
怒鳴り声 ドアを背に響く
許さなくていい 窓辺に映る嘘、月

おとぎ話ならいつか落ちる雷
でも思い上がりかな罪も罰も白々しい
牙を出して戯(じゃ)れたい俺首輪なんかじゃ飼えない
煉瓦(れんが)の家さえ吹き飛ばして何処へだってふらり

狼少年、もう一度駆け出したらもう帰れない
帰らない!

狼少年、もう二度と駆け出したからもう帰れない
たとえ誰の涙が胸に光っても
遮るものなどなにもない 不実な心が眠るまで
このまま彷徨い続けてゆく
出来の悪い夢より嘘で手繰(たぐ)り寄せてゆく安らぎへ
ふたり番(つが)う僕ら、狼青年

「俺と僕」との隣り合わせ
さぁ 心ゆくまで嘘を吐(つ)いて
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