夕日

夕焼け掠れた声「会いたい」と呟いた
馬鹿な自分にハッとして口元を
余る右手で塞いだ

左手指の隙間秋風が吹き抜けた
君が居ない事教えてくれるには
充分すぎる位に

「僕は君のことなんて すぐに忘れてしまうだろう」
「僕は君のことなんて もうなんとも思っちゃいないよ」
「僕は君の笑顔とか もう見たいなんて思わないよ」
「僕は君の涙とか もう見るのもうんざりなんだよ」

時を重ねただけただそれだけのふたりだったんだよ

「さよなら」って言った君の口元が
「ありがとう」って言う隙間を僕にくれずに
強がりな僕だけを残したまま
君の背中が夕日に溶けていく
君を忘れるためには嘘でもさ
なんでもないフリでもしてないと
泣いても気にも止めず涙を夕日は
オレンジ色に染めるだけ

時を重ねただけただそれだけの
ふたりだったんだよ

「ありがとう」も「ごめんね」も言った所で
追い風で僕の耳かすめるだけ
僕が君に言いたかった言葉は
ポケットの中握りつぶした

僕がもしも君の事を呼び止めていたら
強がりな馬鹿な僕じゃなかったら
手を取って抱きしめて、出来ていたらふたり
この夕日を見てたのに
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