同じ月の下

痛い程に分かっていた きみも多分気付いていた
震える背中 立ち尽くす影
それが二人の最後だってことに

ガラガラ電車にギリギリ滑り込む
頭が怠くなる程に温くなったシート
曇り過ぎたガラスに月夜は淡く浮かんで
堪えた涙と共に滲む夜の窓

切り取られた世界はどうにも綺麗過ぎて
思い返さずにはいられなかった

心まで食べ尽して空っぽになってしまうまで
悲しみだとか孤独にさえも
気付くことができないんだ僕ら
いつまでも

冷たい両手と温くなったコーヒー
白い吐息に浮かんだあなたの表情
離れていく電車はまるで二人の距離みたいだね
規則正しいリズムにかき消されてった

繋ぎ止める術はいくつもあったような
それでも多分逃れられなかった

思い出を殺してまで想いを積むくらいなら
綺麗なままで愛しいままで
記憶の中で大事にしておきたいから
あやふやで疑いながらそれでも嘘じゃなかった
その手が触れた場所に今でも
あなたを思い出すことができるよ

終点に吐き出されたひとりぼっちと
いつもの帰り道で佇むひとりぼっちが
同じ月の下でお互いを想うのに
同じように明日を生きていくのに

幸せはそこにあってそれだけしかなかった
答えはないのに応えてほしいから
求めることで傷を付けてしまったね
こんなにも痛むのならあなたに焦がれるなら
それでもいいからそばにいてよと
あの時どうして言えなかったんだろう
ふたりはふたりのまま

同じ月の下で
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