眩暈電話

電話のベルが
鳴りだして尚 何もない部屋
受話器を伝う
誰かの声が言葉を呼んだ

「もしもし、あと三時間だよ。君はどうする?」

そんなあなたと話がしたいな
些細な事 教えておくれよ
二人繋いでる 眩暈はスピカ
ずっと待っていたんだから

裸のポプラ 焦げた瓶底 五月の終わり
碧い雨降り 塗り潰された 朧気な歌

「もういいよ」隠れんぼの途中 呼吸を止めて
「もしもし、あと一時間だよ 君はどうする?」

そんなあなたの名前を教えて
私の映す鏡になって
細い電話線 漂うスピカ
きっと頑迷な嘘になって

空が砕けた 地面に落ちた
昏い話の結末を
誰か教えて 何処へ行くのか
もしくは帰る矛先か

「時間だよ どうする?」

そんなあなたと手を繋ぎたいな
惑う私を確かめさせて
二人繋いでる 眩暈はスピカ
眠気の奥に会いに行くんだ

もしも 淡くとも出会えるのなら
それは瞳を引き裂く様に
新しい夢に涙流して
電話のベルを鳴らさぬ様に

二度と忘れてしまわぬ様に
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