曇天

夕闇の中 ソファで抱きあう
電気を消せば 窓枠が 曇天世界を切りとる

夢が醒めて 背中にさわると
今日の空のような 底の見えない曇りがかった瞳をしていたの
わたしを映さないあなたをずっと 見ないようにしていたのにな

ケセラセラのおまじない あの人を信じたいけれど
繋ぎあわせてほつれた 指先がかじかんできた
ねえ ケセラセララ

骨張った膝に 寝ころんで観ていた
あなたの好きな 純粋で退屈な映画も全部わかってあげられる気がしてた
この世でいちばん 優しい場所だったのにな

ケセラセラのおまじない あの人を信じたいけれど
初めて渡した私を 青春に綴じこめないで
ねえ ケセラセララ

ポケットに入れたままの 言葉をひろげてみたけれど
すぐに偽物と気づいて 駅のゴミ箱に棄てた

ケセラセラのおまじない あの人を信じたいけれど
あなたはわたしを映さない 曇天の向こうには
ねえ ケセラセララ
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