to her

雨が降った午後 傘も差さずに 歩く君の姿はきっと美しい
乗り遅れたバスを見送りながら 歩くはずのなかった道を歩いていく

浅い海の上の無人島達を
濡れた靴で一つずつ飛び越えていくうちに
いつの間にか皆 傘をたたんで 西の空を指差していた

雨上がりの夕焼けに照らされて わけもなく苦しくなった
ただ側に居てほしいんだ 今だけは

見知らぬ老人は杖をつきながら 僕の前をゆっくりと通り過ぎていった
たくさんの人々とすれ違いながら 彼らとは永遠に出会うことはない

君はどこから来たの どんな靴を履いて
誰と出会い 別れながら ここまで来たの
僕はどこから来たんだろう
そんなことを語るうちに いつの間にか眠ってしまおう

雨が降った午後 強い風が吹いて
落ち葉の行き先が変わっていくように
たくさんの人々とすれ違う中で
君に会えるような気がした

雨上がりの夕焼けに背を向けて わけもなく苦しくなった
ただ側に居て欲しいんだ 今だけは

雨はとうに止んで 太陽も沈んで ビルの窓に浮かび上がる薄闇と月
不意に誰かが言った また明日ねと
僕も帰ろう
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