鳰の湖

伊吹(いぶき)おろしが 身を切るように
わたしの心に 冬をつれて来る
二人で見た夢は
はかない蜉蝣(かげろう)か
あなたこの町から 出てゆくの
悲しみに波が立つ 鳰(にお)の湖(うみ)

瀬田(せた)の唐橋(からはし) 渡れば先に
ちいさな倖せ 遠くゆれていた
祭りのかがり火に
おもいで燃えのこる
愛をのせた小舟(ふね)が 音もなく
朝靄(あさもや)に消えてゆく 鳰の湖

沖の白石(しらいし) つがいの水鳥(とり)が
星影うつした 水面(みなも)を飛び立つ
あなたを今もなお
あきらめきれないわ
せめてたずねて来て 夢の中
恋しくて恋しくて 鳰の湖
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