月下美刃

あゝ…風に鳴るは 哀し剣ノ唄

虎も恐るる如き 唸る「蒼ノ一閃」
地獄へと通りゃんせ 一つ二つ罪を
数えて候ふ

あゝ…百花繚乱 餞(はなむけ)は血桜
あゝ…戦さ場には
乱痴気 鞘鳴らむ
今宵も

いざ翼参る 譬(たと)え神でも
不義理は許さぬ
仏に逢うては仏を斬りて
喉笛かっさばく

介錯すら 甚だしい
下郎に遅れなど可笑しい
覚悟の太刀影の
錆になりて還らむ

龍の怒号の如き 落つる「天ノ逆鱗」
空も魂消(たまげ)て笑ふ 人の所業あらず
もののけ也と

あゝ…鏡花水月 儚く朧(おぼろ)也
あゝ…須(すべから)くと
舞ひて 羽根刃(はねやいば)
死に逝け

いざ左様ならば 南無阿弥陀仏
来世逢ひませう
散れどまた咲ひて 蓮(はす)と返さふ
此れまた輪廻也

終夜(よもすがら)の 殺め花
涅槃旅には良き三日月
懺悔の念仏と
手向けの斬(ざん) いやはや

あゝ…いと切なき 侍(さぶら)ふは無常よ
あゝ…狐高く
生けよ天晴れと
今宵も

いざ翼参る 譬(たと)え神でも
不義理は許さぬ
仏に逢うては仏を斬りて
喉笛かっさばく

鍔迫り合う 葛藤在りて
武士(もののふ)此処に極まる也
正しき義を握る
剣道ーつるぎみちーで御座らむ
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