清姫道成寺

花や散るらん 花や散るらん
花や散るらん

作りし罪も消えぬべき 作りし罪も消えぬべき
鐘のお供養拝まん
月は程なく入汐の 月は程なく入汐の
煙みちくる小松原

あら嬉しや 烏帽子を暫し仮に着て
既に拍子を進めけり

花の外には松ばかり 暮れ初めて鐘や響くらん
初夜の鐘を撞く時は 諸行無常と響くなり
花の外には松ばかり 暮れ初めて鐘や響くらん
後夜の鐘を撞く時は 是生滅法と響くなり

花や散るらん 花や散るらん
花や散るらん

春の夕べを 来てみれば 春の夕べを 来てみれば
入相の鐘に花や散るらん

我をばいつまで捨置き給ふぞ
奥へ連れて お下りあれ

花の姿の乱れ髪 思へば此鐘 恨めしや
龍頭に手をかけ 飛ぶとぞみえし
引きかずきてぞ 失せにける
花の姿の乱れ髪 思えば思えば恨めしや
乱れし髪の乱るるも その結縁のためぞかし

入相は 寂滅為楽と響くなり
聴いて驚く人もなし 我も五障の雲晴れて
真如の月を眺め明かさん

花や散るらん 花や散るらん
花や散るらん
花や散るらん 花や散るらん
花や散るらん 花や
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