静かな雨のロマンス

静かな静かな雨が 旅路の心を
愛しく濡らして降る ロケ先のことさ
行きずりの喫茶店で ふと見た人の
きれいな瞳がなぜか 忘れられない

「えー そうです。ぼく勝新太郎ですけど、なにか…
あゝ あなたがあの…
いつもS・Yっていう頭文字だけでお手紙を下さる…
あゝそうですか あれ、あなただったんですか…。」

静かに静かに語る あの夜の二人を
思えば懐かしい夢 ひとときの恋さ
ほの香るも香の味も いつしか冷めて
寂しい笑顔でそっと 別れたけれど

「あの時もやっぱり S・Yって言っただけで…
とうとう本当の名前を教えてくれなかったけど…
あゝあ あの若き日の思い出にまたたく瞳…
S・Yの君か…」

静かな静かな雨に 暮れゆく過た日の
うつろな心にまた 浮かびくる瞳
あの夜の喫茶店で しょんぼり一人
今頃あの娘はなにを 思ってるだろう
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