壇の浦

白々(ほのぼの)と須磨や明石に朝霧こめて
朧に見ゆる淡路島
白沙を掠めて青松(せいしょう)の
間を縫い行く白帆(はくはん)は
島隠れ行くあま小舟
寿永の昔平軍が
立籠りたる一ノ谷
天険頼みし要害も
ひよどり越の逆落し
一葺隔てし八幡潟
一家の安危を竿頭に
賭けて卜せし軍扇も
那須与市が一箭に
入(い)る日の丸の西の方
海路遙けき壇ノ浦
蓬窓かゝげて眺むれば
双ぶ満珠に干珠島
帆柱山は雲がくれ
門司の磯辺にとうとうと
押寄す波間に鬼啾々
昨日は都に春めきて
栄華を誇りし平族の
末治を茲(ここ)に鑑みば
不義の富貴は浮雲か
草葉における朝露の
頼み難きを感ずらん
愉快じゃ 愉快じゃ

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