故郷

奈落はこの手で選択できるが
子宮は自ら選べやしないんだ
皮肉だね神様 無情な所業だ

だからこの僕は
背の高いビルや人の群れの無い
こんな地味な街で産声上げた
富裕な家でもない

もしも始まりが選べたとしたら
この地味な街は選ばなかったろうな
産まれる前から強欲だろうから

そしたら貴方達の元に
生まれることは無かったろう
君にさえも出会えなくて
今所有する全ての幸せは無い

これで良かったんだ
きっときっと…
僕の横で笑う君を見て思う
そっとそっと…

輪廻や転生
意に染まぬ概念
「明日からやる」って
口癖の様になった
怠惰みたいで気に喰わないね
次なんて奴は不確かなものさ
それを期待するより
二度と使えなくなるくらいに
酷使しろよ霊魂
崩してしまえよ業

仮に神や来世があれど
今を生きるのが清さって奴だろう
背けないで 逸らさないで
貴方が見縊るほど悪くは無い

これが良かったんだ
そうだそうだ…
僕の前で笑う君を見て思う
そっとそっと…

これで良かったんだ
きっときっと…
僕の横で眠る君を見て思う
そっとそっと…
君に会えたこの街を君と歩こう
ずっとずっと…
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