ゼラニウム

南の園に咲く
鑑みる双樹の枝
不知火喚く靄
触れられない枷

悠久の時を
永久に誓う制約
澄み渡る青空が
澱んで深まる

僕はここだよ君はどこなの?
糸と糸がむつばる
白紙の裏に書かれた言葉を知りたいと願う

蜜月が育んだゼラニウム
始まりは終わりの馴れ初め
水面に映るありふれた子守唄
歩めども遠い南回廊

悠久の時を経て
変わりゆくのは寒空
唇が霞む
それすら愛しい

奥床しくも囁くように
白き霜が崩れる
隠した不和に抱かれた既望で何処までも黒く

新月に色褪せたゼラニウム
哀しみは揺れる蜃気楼
遥か彼方へいつか見たその仕草
あの刹那にはもう戻れない

暖かい夕陽に照らされたあの日も
今ではもう陰がすべてを隠した
僕はここだよ君はどこなの?
交わらない
いつまでもいつまでも僕だけがこの場所に居る

蜜月が育んだゼラニウム
始まりは終わりの馴れ初め
どうか今すぐ抱き締めてくれないか
優しさでこの身を引き裂いた
見えざる手のひらの
浮遊城へのいざない
きっと皆等しく在るべきその姿
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