みぎてのうた

眞冬と云ふのに
なまあたゝかい
風が吹いてゐて

時をり海の匂ひも
運んで来て

道では何かの破片が
きらきら笑ふ

貴方の背を撫づる
太陽のてのひら

貴方を抱く
海苔の宵闇

すゞめのおしやべりを
聞きそびれ

たんぽゝの
綿毛も
浴びそびれ

雲間のつくる
日だまりに
入(い)りそびれ

隣りに眠る人の夢の
中すら知りそびれ

毎日の道すらすべては
踏みそびれ

すごい速さで
記憶となって
ゆくきらめく日々を

貴方は
どうする事も出来ないで

貴方などこの世界の
切れつ端に
すぎないのだから

貴方など懐かしい
切れぎれの誰かや何かの
寄せ集めにすぎないのだから

だから
いつでも
用意さるゝ
貴方の居場所

どこにでも宿る愛
どこにでも宿る愛

変はりゆくこの世界の
あちこちに宿る
切れきれの愛

ほらご覧

いま其れも
貴方の
一部になる
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